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この身は露と消えても……とある転生者たちの戦争準備《ノスタルジー》  作者: 有坂総一郎
皇紀2590年(1930年)

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雌伏の大魔王

皇紀2590年(1930年) 8月10日 アメリカ合衆国 東部時間 ニューヨーク州


 史実において大魔王と日本国内の一部から称される存在であるフランクリン・デラノ・ルーズベルトは史実通りにニューヨーク州知事として政務に臨む。


 全米で最も人口と企業が集中するニューヨーク州だが、その影響力は依然大きいものではあったが世界恐慌による悪影響は豊かなニューヨーク州を蝕んでいる。


 太平洋を挟んだ格下と言ってもライバルである大日本帝国は世界恐慌などどこ吹く風で継続的な好景気であり、同時に余剰人口の吸収に成功しており、それどころか海外移民の出戻りすらあり、それによって国内のインフラ基盤、生産規模の拡大強化が進んでいるという状態は人種差別主義者であるルーズベルトにとって不愉快な状態であったのは間違いない。


 まして、自分が親近感を抱く支那を列強と揃って分割した事実は彼の心の中の黒い部分を刺激してならないのである。


――ジャップ如きが大きな顔をしおって。精神年齢12歳程度であるというのに列強を手懐け、チャイナを分割するだけでなくヨーロッパ分割にまで口を出すなど……。


 日々悪化するニューヨーク州の経済指標と大日本帝国の勇躍が彼の白人優越主義思想を刺激しているのは間違いない事実だった。事実、ニューヨーク州において日系企業による買収、経営悪化している中での技術の買い叩きが増えていたことで大日本帝国と日本人への憎悪が増していたのだ。


――神に選ばれし存在である我々が黄色人種如きに跪くなどあってはならん。日本企業にやすやすと買収された企業も国賊だとすら思える。


 州知事として彼の仕事ぶりは凡庸であるとまでは言わないが目立つ成果を出しているわけではなかった。連邦政府が緊縮財政をしていることもあり、積極財政をしたところでその効果は知れている。また、そもそも世界恐慌の原因は過剰生産と金融バブルである。


 大日本帝国の様にインフラへの傾斜投資をするというそれが効果的な経済政策であるとは言えない。実際、史実におけるニューディール政策はその殆どが景気対策としては効果を表してはいない。二次大戦における大量生産と大量消費があって初めてアメリカという国家は復活したのである。


 大日本帝国の弾丸列車、改軌による高速化は非常に劇的な効果を表しているが、アメリカ国内では30年代後半には最高速度160~190キロを出す機関車が登場していることもあり、大日本帝国ほどに速度性能や軌道強化などの需要がみられないこともあって、競合する鉄道会社同士のそれはあっても国家事業としてそれを進めるほどではなかった。


 また、需要低迷期であるがゆえに積極的な投資そのものが控えられていたこともある。


――セントローレンス海路……またこれの陳情か……確かにこれが出来れば大きなメリットがあるだろうが、それと同時にニューヨーク・セントラル鉄道やエリー運河などに多大なダメージが出る……。しかし、これを事業化出来ると大規模な財政出動で景気浮揚にはなる……。


 決裁書類、陳情書類の山を崩しつつも目下の最大懸案である景気悪化とそれへの対策はルーズベルトにとって州知事としてなんとかしたい問題でもあった。

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― 新着の感想 ―
[一言] アメリカは鉄道先進国であったが、自動車産業が勃興してきて風向きが変わった。 《乗客を独り占めするのは独占禁止法に抵触する》とかいうもはや言い掛かりのような訴訟を起こされ、鉄道会社は敗訴して鉄…
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