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この身は露と消えても……とある転生者たちの戦争準備《ノスタルジー》  作者: 有坂総一郎
皇紀2590年(1930年)

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それぞれの宿願

皇紀2590年(1930年) 8月2日 ドイツ=ワイマール共和国 ポツダム


 世界恐慌の影響を受けた30年、この年の選挙でナチ党は大躍進するのであった。史実通りの躍進、いや、史実を上回る120議席を確保するに至っている。


 史実では7月に議会が解散し、9月に総選挙があったのであるが、パウル・フォン・ヒンデンブルク大統領は政権運営ままならない与党首相に辞任を要求し、与党が政権を投げ出したことで3月に議会解散、4月総選挙となったのである。


 この総選挙の結果、与党社民党が大きく勢力を減じると同時に、帝政復古派である中央党などの勢力が増大していたが、その実最大の伸び幅を示していたのはナチ党と共産党であった。保守勢力の受け皿になったのがナチ党であり、左翼勢力の受け皿が共産党になったのであった。その結果、中道勢力は大幅に減退したのである。


 この結果によって、ドイツという国家の運命もほぼ確定したと言える。概ね史実通りのドイツ国政へのナチ党の躍進はいずれライバルであり思想的に相容れない共産党の排除に動くことは明白である。


 この日、ヘルマン・ゲーリングはツェツィーリエンホーフ宮殿にとある人物のもとを訪ねた。


 この宮殿の主はフリードリヒ・ヴィルヘルム・ヴィクトル・アウグスト・エルンスト。ドイツ皇帝ホーエンツォレルン家の一員であり、皇太子であった人物である。


 ゲーリングが応接室に通されると、暫くしてから元皇太子が現れた。


「ヘルマンよ、久しいな。して、今日は何用かな?」


 元主君筋の人物に最敬礼を示してからゲーリングは本題に入る。


「殿下、いよいよ帝政復古の時が近づいて参りました。我らナチ党が政権を握る日も近いでしょう。さすれば、殿下には再び玉座についていただき、ドイツ皇帝として帝国を導かれる日が参ります」


「ほぅ、そうか。だが、ヒトラーは私との約束である帝政復古を履行してくれるのか?」


 元皇太子はゲーリングに尋ねる。


「……」


「どうした? ヘルマンよ、なぜ黙るのだ」


 元皇太子の視線は厳しくゲーリングを射抜く。


「殿下には申し上げにくいことながら、ヒトラーは約束を反故にする可能性があります……」


「そうであろうな。まぁ、それは良い。問題はそこではない。オランダの父上からお叱りを受けているのだ。安易にヒトラーと妥協するなと……共和国はあくまで我が帝国を簒奪した叛徒である……その役職に就くなどあってはならんと……」


「陛下のお言葉は尤もでは御座いますが……しかし、帝政復古を為すには内側から……かつてナポレオンが帝位についたが如く行うのが最も近道と心得ます」


「そうよな……だが、ホーエンツォレルン家から追放すると言われてはそうもいかん……ヘルマンよ、そちがヒトラーに成り代わり頃合いを見て政権を掌握し、余に大政を奉還せよ……ほれ、極東のヤーパンもタイクンがミカドに統治権を差し出したであろう」


 元皇太子からの提案にゲーリングはたじろぐ。額に滲む汗を拭き応じる。


「殿下、しかし、それは……」


「よい、今の言葉はそちの胸の内に秘めておくが良い。今すぐに事を為せとは言わぬ……」


「……承りました」


 ゲーリングはその後いくつかの報告をすると宮殿から辞去した。

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