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この身は露と消えても……とある転生者たちの戦争準備《ノスタルジー》  作者: 有坂総一郎
皇紀2583年(1923年)

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ハバロフスク攻略作戦発動

皇紀2583年(1923年)6月9日 スパッスクダリニー


 元々、攻勢を予定はしていた浦塩派遣軍であったが、第8旅団長荒木貞夫少将と血気盛んな若手将校の強硬意見に流された結果、ハバロフスク攻略が始まった。


挿絵(By みてみん)


 最前線であるスパッスクダリニーからハバロフスクまでは片道400km程度の行程である。シベリア鉄道に沿って進軍するだけであれば平坦そのものであり、非常にスムーズな侵攻が可能である。


 だが、問題は途中いくつか存在する峠を中心とする縦深陣地が待ち構えているということだ。


 ハンカ湖畔の平野部にある敵勢力圏はほぼ敵の存在が確認されず、スパッスクダリニー北東100km程度にあるダリネレチェンスクまでの進軍は容易であると司令部参謀は太鼓判を押した。


 第一段階作戦は、自動車化歩兵による強襲でダリネレチェンスクを速攻で落とし、鉄道連隊による鉄道修復と改軌を行い、ここに前進拠点を設置、鉄道の開通までに工兵隊による第一次防衛線を展開する。


 第二段階作戦は、ダリネレチェンスク北北東80km付近にあるビキンを抑えることであるが、ビキンは盆地状地形であり、東南北がそれぞれ山に囲まれている地形であり、敵による防衛ライン構築はここが有力視されている。


 ビキン南方の仮称第一要塞線とハバロフスク方面の連絡遮断を目的にウスリー川からの上陸作戦を敢行し、仮称第一要塞線の孤立化を狙い、同時に要塞南面からの攻勢を掛け、要塞線突破を図る。


 有坂重工業が民間用に開発した機走漁船を徴発、これをウラジオストクからシベリア鉄道経由でダリネレチェンスクへ移送し、上陸作戦に活用することとした。


 第三段階作戦は、ビキン‐ヴァーゼムスキーに構築されるであろう仮称第二要塞線を突破、北上し、ハバロフスク前面まで進出すること。


 このような段階的作戦行動によって占領地域の拡大と鉄道による継続的な兵站確保を行うという手堅いものとなっていた。


「この様な作戦では敵に抵抗する時間を与えてしまいます!常に敵後方へ浸透し、敵の連絡を遮断し、皇軍の伝統である夜襲で敵陣を強襲し、間髪入れず攻め込むべきです」


 荒木少将は作戦案に不満を述べた。


 浦塩派遣軍参謀長磯村少将はホントにコイツは……という表情で投げやりに言った。


「荒木旅団長、スパッスクダリニーからハバロフスク前面まで400kmあるんだぞ? それをどうやって補給を維持しながら短期間に攻めるというのだ。無理だろう、それとも貴官には妙案でもあるというのか?」


「その様な慎重な作戦ではいくら時間があっても足りぬと申しておるのです! 攻撃に重心を置くべきであり、そのためには速戦でなければなりません!」


「だから、貴官は補給をどうするのだ? まさか兵に弾薬尽きたら突撃あるのみ! とでも言うのか? そんなこと参謀長として認めるわけにはいかん!」


「弾薬は尽きようとも皇軍精神は尽きるものではない! こちらが苦しいと思うとき、敵はもっと苦しい筈、であれば、精神力で勝っている方が勝つというもの!」


「論外だ。敵はシベリア鉄道を使っていつでもいくらでも補給が出来るのだぞ!」


 正論と精神論のぶつかり合いであった。


 当初、浦塩派遣軍上層部は占領地がいくらか増えればよいという程度で思っていたが、荒木は本気でハバロフスク攻略を考えていたのだ。


 そこに考えの相違があり、結果として作戦案と荒木の対立が生まれたのである。


「貴様がいくら精神論を唱えようが、司令官として認めるわけにはいかん。貴様は精神力で奮い立とうが、末端の兵士は無駄死に覚悟で突っ込まねばならん。そんなことすれば我らは遺族にどう言い訳すればよいのだ? 貴様が良く戦って死にましたと言って遺族を、国民を説得出来るのか?」


 付き合いきれんと言う表情で立花大将は続けて言った。


「荒木、兵たちは貴様のオモチャではない。まして、貴様と貴様に与する若手将校のやっていることは軍の規律を乱しているに他ならない。いい加減にせぬと抗命を理由に営倉へぶち込むぞ!」


「閣下の仰る通り、作戦案に沿って第8旅団は行動し、不必要で軽率な行動はするな。これは司令部からの命令であると理解されたい。よいですな、荒木旅団長!」


 磯村も畳みかける様に言い、立花とともに前線司令部会議室から退出した。


 残された荒木はこめかみに血管を浮き上がらせ吐き捨てた。


「そんな弱腰でどうする」

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