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この身は露と消えても……とある転生者たちの戦争準備《ノスタルジー》  作者: 有坂総一郎
皇紀2590年(1930年)

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全社総動員体制

皇紀2590年(1930年) 7月14日 帝都東京


 東條英機少将が陸軍省の会議室で各種調査結果の報告を受け、それに対しての次なる指示を与えている頃、有坂総一郎は長距離移動の疲れを癒す間もなく午前一番から本社会議室で同じように指示を飛ばしていた。


 前々日に妻の結奈を通じて指示を出していた”全社総動員体制”について状況の把握とともに生産拠点における週単位での生産見込数の見積もりと各種製品の開発計画……主に軍需向け発動機、次期主力火砲、そしてTNTに代わる新型火薬トーペックスは優先事項として開発を急がせていた……についての報告を受けていた。


「優先度についてだが……トラック、火薬、野砲、弾薬、銃火器、発動機の順とする。電波技術については人員は今まで通り、ただし、予算は追加を認める」


 総一郎の指示は簡潔であった。元から優先度のパターンは組み立てられていて経営陣は総一郎と同じ判断の下で各部門に指示を出していたことから確認の意味合いが強かった。だが、経営トップの正式な決定が出ないことには各部門が正式に総動員体制に移行出来ない。


「また、工場増設を行う。岡山県水島の干拓地にトラック工場を1ヶ所、島根県揖屋に発動機工場を1ヶ所、大分県宇佐に火薬製造工場を1ヶ所……これは予定を前倒しして直ちに取り掛かることにする。また、大分にアンモニア製造工場を1ヶ所それぞれ増設する……今後の需要増を考えるとアンモニア製造も急務である」


 揖屋と水島に工場を作ることは伯備線の全通によって山陰山陽の連絡が可能となったことが理由であるが、同じく島根県安来に誘致され操業しているフォード・ジャパンとの提携も含んでのものだ。


 九州に火薬とアンモニアの工場を作る理由は簡単な話で、鈴木商店から引き継いだアンモニア事業の拠点が九州にあることと、瀬戸内海に面していることで火薬類の輸送を船舶輸送によって安全に輸送出来ることが理由となる。また、小倉造兵廠や呉海軍工廠、佐世保海軍工廠などとの連携もある。


「会長、現在開発中の携帯無線機は……」


「あぁ、それか、開発は順調なのかな?」


 有坂電工がメインとなって開発を進めている携帯無線機の存在を総一郎はすっかり忘れていた。陸軍省に掛け合って試作機を納入し、野戦演習でC3Iシステムを構築した小部隊が戦力で圧倒する部隊を返り討ちにしたことで陸軍省が乗り気となって開発を始めたものだ。


「以前納入したものよりは小型化出来たのですが、流石に背負って歩くにはまだ重いかと……あとは東北帝大の研究者たちの応援で電波出力なども安定してきたのですが……」


「売り物になるほどの価格には出来んか……」


「ええ、商業ベースにはとてもできませんね……あくまで軍用と割り切って頂くしか……」


 流石に総一郎も結奈と顔を見合わせて仕方ないという表情を浮かべる。現代ですらスマートフォンはそれなりに高価な代物であるし、それ以前の携帯電話でもその登場時の価格などを考えれば当然のことである。


「価格については陸軍省と相談するが、出来るだけ軽くして、出来るだけ充電池が持つ様に改良を進めて欲しい……」


「社運を賭けて取り組みます……価格はどうにもなりそうにありませんが……」


 その後もいくつかのやりとりがあり、会議が解散となったのは昼を過ぎてからのことであった。

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― 新着の感想 ―
[一言] アンホ爆薬も特許取りたいところですな(とってあるかもだけど)
[気になる点] アンモニアの量産が軌道に乗れば化成肥料の流通も増えるか。 あれ、朝鮮のチッソはいつだっけ。
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