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この身は露と消えても……とある転生者たちの戦争準備《ノスタルジー》  作者: 有坂総一郎
皇紀2590年(1930年)

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爆弾テロ<2>

皇紀2590年(1930年) 7月14日 帝都東京


 斎藤実朝鮮総督が爆弾テロに遭って3日目、帝都東京は戒厳令が敷かれたかのような物々しい空気が漂っていた。


 内地から朝鮮人は強制的に退去させられ、残っているのは帝都在住の李王家と朝鮮貴族くらいなものであった。だが、朝鮮人による総督への暗殺未遂という大事件がゆえに李王家を含む朝鮮貴族はその全てが自宅謹慎を命じられ東京第一連隊と東京憲兵隊によって厳重な監視下に置かれていた。


「我々は帝国に忠誠を誓う貴族である。このような仕打ちは許せない」


 監視下の朝鮮貴族は憲兵らに食って掛かったが、それとて応じることはなかった。


「貴様らは容疑者の一人である。容疑が晴れるまでは一切の待遇改善など出来ない。そもそも、貴様らにかけられている嫌疑は国家への反逆であり、陛下の名において任命されている総督を害したもの。帝国において最大級の犯罪行為に対するものであると心得よ。即時死刑でも不思議はないのだ。逮捕拘禁されないだけありがたく思うことだ」


 憲兵たちは食って掛かる朝鮮貴族とその家族へ一喝し黙らせるということが帝都各所で頻発していたが、朝鮮貴族らの言い分も尤もであった。ある日突然犯罪者扱いされれば誰でも腹を立てることだろう。だが、憲兵らもまた正当な理由での抑留である以上それを受け入れるわけにはいかない。


 だが、抑留期間が長引けばその分だけ彼らの不満も蓄積する。食生活も質素かつ簡素になりそれがまた不満につながるのだ。


 そして監視下に置かれて3日目の7月14日、とある朝鮮貴族の邸宅で事件が起きた。タバコがなくなり使用人に買いに行かせたことが憲兵隊にバレたのである。結果としては内通者であり連絡役であったという事実はなかったのだが、監視下でありながら不審な行動をしたことを咎めた憲兵に朝鮮貴族は逆上してあろうことか発砲してしまったのである。


 一発の銃声は事態を動かすこととなった。


「公務執行妨害及び大逆犯として現行犯逮捕する!」


 まともに銃の訓練をしていない人間が銃など撃てばそうそう当たるものではない。憲兵の左肩をかすめ裂傷こそ作ったが軽傷で済んだのだが、彼がやったことは自身の身の破滅を招くには十分であった。


 憲兵からの報告はすぐさま憲兵隊本部に上がり、帝都中の朝鮮貴族は全員が武装解除の上で逮捕され刑務所へ送られることとなった。朝鮮貴族の家族と使用人は邸宅内へ閉じ込められ、外部との接触及び外出を禁じられ、これに我慢ならず反抗した者もまた容赦なく逮捕され刑務所へ送られることとなったのだ。


 それから数日、尋問の上で容疑に関係がないと判断された使用人たちは順次解放されることとなったが、彼らは一様にこう答えた。


「警察は自分たちを庇うし情けがあったけれど、特別高等警察と憲兵は鬼の様に取り調べを行う。鬼たちの前では怖くて話せなかったが親身になってくれる警察官に喋った。それから旦那様方の代わりにお給金をくれた」


 その中で有力な証言がいくつか得られた。その証言をした女中らには後日出処不明の現金が自宅に投げ入れらるということがあった。

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