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この身は露と消えても……とある転生者たちの戦争準備《ノスタルジー》  作者: 有坂総一郎
皇紀2590年(1930年)

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台湾の殖産興業

皇紀2590年(1930年) 5月31日 大日本帝国 台湾総督府


 この日、台湾における大規模インフラ事業である八田ダムが竣工した。


 台湾南部は広大な平野が広がっているが水利が悪く、灌漑設備は整っていなかったこともあり台湾総督府は長年この地域の開発に投資を行うことで農業の発展を促していたが、10年かけて建設を続けていた八田ダムの完成によって遂に一大灌漑事業の完成を見ることが出来たのであった。


 計画は日本人技術者の八田與一の手により策定され、建設工事には大倉土木を主とし、鹿島組、住吉組、黒板工業の各社が参画し、10年の歳月をかけ建設された一大事業であった。


 常に日照りや豪雨さらには排水不良に悩まされてきた台南平原地区だが、このダムの完成によって稲作だけでなく、従来のサトウキビ栽培などに大きく貢献することで台湾経済への活力を与えるものと台湾総督府は期待を寄せていた。


 台湾総督府はこの事業の完成によって八田へ更なるダム建設を要望し、用地選定を命じていた。これは史実にはない動きであり、39年に八田が戦後に曽文ダムとして建設されるそれを提案した動きと逆の展開となっていたのだ。


 台湾総督府の要望に沿って八田はすぐさま第二期工事計画として行動を開始し、同時に台湾の高速鉄道建設を要望し、基隆~台北~台中~台南~高雄の輸送力増強を逆提案したのである。これは内地の鉄道の発展を目の当たりにした八田が折角灌漑化された台南平原の産物の大量輸送を行うことで物流改革をすることで台湾経済の活性化と内地経済との連動を狙ったのだ。


 台湾の鉄道は内地と比べても旧式化著しく、輸送単位も小さいため物流コストが高くなりがちであり、それによって相対的に利益効率が悪くなるという構造的問題が今後大きく悪影響を及ぼすと八田らプロジェクトチームの面々は内地の物流を見て思い知ったのであった。


 また、同様に基隆や高雄の港湾施設も貧弱であり、処理能力不足を痛感したのであった。


 だが、悲しいことに台湾総督府は八田らの要望に応えることは出来なかった。


「八田君、君の言うことはよくわかる。私とて出来ることなら命じておる。だが、我が総督府はカネがないのだ……あのダム一つ作るのでさえ負担は大きかった。さらに我が総督府はダム建設を推進しようと考えている……鉄道や港湾に振り向ける予算はないのだよ……」


 台湾総督石塚英蔵は八田らの提案に際して総督府の台所事情を伝え、官主導での事業は無理であると示した。


 だが、同時にこうも伝えたのである。


「八田君、君たちが頼るべきは交通局総長の白勢黎吉君だ。彼と相談してくれれば私が出来ないと判断したことでも何らかの方法を見つけてくれるだろう。それに内地鉄道省との橋渡しくらいはしてくれるだろうから、この後尋ねてみると良い」


 台湾総督府鉄道は台湾総督府の財源の2割を支える黒字官営事業だが、そこの利益を鉄道建設に充てたら台湾総督府の財源が不足することは明白であるが、蛇の道は蛇である、部外者では無理だと思うことでも抜け道はどこかにある。


 官僚同士、手口はわからなくても手法は似た様なものであるから何か助けになるだろうとのアドバイスだった。

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