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この身は露と消えても……とある転生者たちの戦争準備《ノスタルジー》  作者: 有坂総一郎
皇紀2590年(1930年)

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内偵調査<1>

【告知】ドイツ襲撃艦コンペ開催【告知】


1930年夏に就役するドイツ襲撃艦についてコンペを開催。11月30日までの期間で応募を受け付けるので是非参加していただきたい。




活動報告「このはと」ドイツ襲撃艦のコンペ


https://mypage.syosetu.com/mypageblog/view/userid/1102207/blogkey/2449084/




大和型のテンプレートを用意しているのでそれを参考に応募して欲しい。

皇紀2590年(1930年) 5月1日 アメリカ合衆国 ニューヨーク


 マンハッタン区イーストリヴァーパークに程近いアリサカUSAのオフィスには本社から送り込まれたA機関所属のエージェントたちが紛れているがそれはアリサカUSAの社員たちには気付かれておらず、普段通りの諜報活動を行っている。


 無論、彼らは名前どころか経歴に至るまでかなりの部分が偽造されたものである。


 出自は殆どの場合陸軍出身であるが、その多くは生粋の軍人ではなく、大学を出た人材であり、特に経営学や数学、理工学などに明るい。そんな彼らに求められているのは非合法のスパイ活動ではなく、合法的なそれであり、ビジネスマンであったり技術者として情報を収集することである。


 大和型戦艦の建造情報が英米には漏れていたことは有名な話だが、これは別に非合法なスパイ活動によるものではなく、商取引情報や財閥関係者などから聞き出した情報を組み立てたことで判明したものであると言える。


 また、翔鶴型空母の情報が混在したことで、伝言ゲームで戦艦カデクルなるものが生み出されるということもあった。


 スパイ活動というのは映画で活躍するそれらが一般的イメージだろうが、地味な活動も非常に重要である。前者をアクティブとすれば後者はパッシブと定義づけることが出来るだろう。そもそもバレてしまえばスパイとして失格である以上、バレないで情報収集することこそが本義だと言えるだろう。


 彼らは主に重工業、自動車産業、航空産業などを中心に情報収集を行っているのだが、今回のターゲットは少し違う。彼らのターゲットはアルテミス・フォン・バイエルライン。アリサカUSAの総支配人(ゼネラルマネージャー)である。


 パッシブチームによる内偵調査が本社から命じられたことでアルテミスの行動を監視報告することとなっている。より正確に言えば有坂結奈執行役員によってアリサカUSAの取引実態に疑問が投げかけられたことで暫くの間の取引実績の精査と彼女が専任しているプロジェクトの内偵を行うことになったのだ。


「有坂本社がアリサカUSAを通して発注した案件の取引実績が要望の半分以下という状態が続いています。特に本国輸入案件の実績が振るわない結果が続いていることで本社は事業計画が狂ってしまい困っています。何か不正がないか調査をお願いします」


 結奈は石油プラントの発注数に対しての契約数の数が少ないことに疑問を感じていたのだ。


「アメリカは過剰生産状態であり、生産設備に余裕があるはずなのに輸入量が落ち込んでいるのか疑問です。無論、昨今のアメリカ側の意図的な輸出拒否という側面も十分考えられるのですが、それを考慮してもこの数字は少な過ぎるのです」


「有坂執行役員の懸念は尤もではありますが、バイエルライン総支配人はアリサカUSAで恐慌の真っ只中であっても取引実績を落とさず本社に貢献をしています。ですから、不正であったり本社に不利益となることはしているとは思えません」


 結奈の主張に対して、本社幹部の一部が慎重論を唱えたが、両者の主張はそれぞれ筋が通っているため経過観察ということで本社会議において決した。これに結奈は不満であったが、本社での会議での決定を覆すことは出来なかった。


 この会議には有坂総一郎も出席していたが彼は特にその際に発言をしなかった。それも結奈にとっては不満であったが、立場上どちらかに味方することは適当ではないと彼女は納得して責めることはしなかったのだ。


 だが、紀元節の箱根会議で総一郎もアリサカUSAを通しての輸入に支障が出ていることを東條-有坂枢軸の面々に報告していることから自分が請け負っている事業に問題を抱えている以上は座視出来ないと考えてはいた。


「A機関に内偵させよう」


 会議が終わって執務室へ戻った総一郎は結奈に一言伝えた。


「でも、経過観察って……」


「会社としてはそうするしかないよね。会社としては他の部門で利益を上げればいいけど……これはうちの会社の問題で片付ける問題じゃないから……彼女のことは信じているんだけどね」


「彼女、頭が切れるから尻尾を出さないんじゃなくて?」


「怪しいと言ったのは君だろう? 簡単に尻尾を出さないからこそ幹部連中も君の査察案を否定したんだろうさ」


「そうね……でも、空振りになるでしょうけれど、彼女に本社が疑っていると思わせることが出来れば十分だと私は思っているわ」


「叩いて埃が出なければいいのだけれどね。彼女は優秀だから失いたくないんだよ」


「あら? 優秀な女は何するかわからなくてよ? 目的のためには手段を選ばないなんてよくあるのだから」


「怖いこと言うなよ」


 総一郎は結奈にそう言うが彼女の笑みを見て震えたのだった。彼女の瞳は全く笑っていなかったからだ。

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