大魔王の召喚儀式とも言うべきアメリカ国内事情
【告知】ドイツ襲撃艦コンペ開催【告知】
1930年夏に就役するドイツ襲撃艦についてコンペを開催。11月30日までの期間で応募を受け付けるので是非参加していただきたい。
活動報告「このはと」ドイツ襲撃艦のコンペ
https://mypage.syosetu.com/mypageblog/view/userid/1102207/blogkey/2449084/
大和型のテンプレートを用意しているのでそれを参考に応募して欲しい。
皇紀2590年 4月10日 アメリカ合衆国
日本とアメリカの対立は深刻であった。本来、史実では両国はそれほど対立が深刻になることはない時期である。
だが、今この時期において日米が決定的に対立している原因は有坂総一郎らに誘導されて早期勃発した満州事変と史実において幣原外交によって回避された支那への介入だ。これらによってアメリカはラストフロンティアである支那の市場から事実上叩き出されてしまった。
それはフランクリン・デラノ・ルーズベルトに代表される支那通などに大打撃を与えていた。無論、商取引がなくなったわけではないが、明らかに工業化著しい日本からの製品流入によって物流費用が安い分徐々に市場優位を失い、同時に金融においてもイギリス資本の進出が権益確保と連動して進んだ結果、一大拠点である上海においてもシェアを奪われていったのだ。
この事態を指を銜えて見ていただけではなかったが、アメリカが味方した蒋介石政権は列強から袋叩きにされ北伐を中止せざるを得なくなり、また南京や上海への支那各勢力からの攻撃や虐殺といったことから距離を置かざるを得なくなったのだ。
華中方面での失敗を満州で取り返そうと画策し、張作霖軍閥を通して満鉄権益を侵害させるなどしたがソ連の満州侵攻によって張軍閥が日本側に支援を求めたこともあり、ここでも歯車がかみ合わなくなり、最終的にはコミンテルンによる張作霖爆殺、それと同時に日本の満州侵攻によって始まる満州事変で完全に満州における橋頭堡を失った。
また、満州問題委員会において一枚噛もうと画策するも既に日英間での秘密協定による権益分配によって欧州列強が日本側に付いたこともあり介入の余地を失ってしまった。
これらによってアメリカの支那大陸における政治的経済的な橋頭堡が失われたことによるダメージは深刻であった。同時にアメリカ経済はすでに飽和し、バブル経済になっていたこと、自ら消費出来る以上の過剰生産が止めを刺したのだ。そこにニューヨーク証券取引所における株価暴落から始まる世界恐慌が始まった。
20年代の狂乱時代は世界恐慌という悪夢によって終焉を迎え、同時に有望な市場を失ったことはそのまま日本への嫉妬と反感を増幅させた。
要するに大日本帝国は……東條英機と有坂総一郎を中心とする東條-有坂枢軸の一派が仕組んだ日本の飛躍は成功したが、やり過ぎてしまったのだ。そう、欧州列強への権益配分でご機嫌取りを行いつつ孤立化を避けるという方策は成功していたのだが、ただ一人仲間外れになったアメリカ合衆国が面白いわけがない。
しかも、手を引いたシベリア出兵は成功して正統ロシア帝国という傀儡国家が誕生し、そこにロシアマネーがアメリカから流れていき、亡命ロシア・ウクライナ人も再度亡命をしていく……そこにあるのはカネやヒトだけでなく、技術も一緒に流れていく。
アメリカ人たちは自分たちこそ神から選ばれた世界を指導するべき存在だと信じているだけに、20年代末期から現在に至るまでの栄華栄耀の時代からの転落は信じ難く受け入れ難いものだった。
そこに一部のエリート官僚やオピニオンリーダーがレッドコミュティーと接触するのは自然な流れとも言えた。そこに傲慢さがないかといえば嘘になるだろう。自分たちこそ衆愚を指導し、国家を導くべき存在だと思い上がりがなかったかといえばやはりそれも嘘になるだろう。
世論に引きずられる政治家たちが声高に反日や統制経済を叫び、資本家たちはそれを忌避する。軍産複合体は軍拡を望み、政権は国際協調と財政的都合から軍縮を望む。
アメリカという国家は今や四分五裂の状態であった。まさに強い指導者の登場を早くも期待されつつあったのだ。




