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この身は露と消えても……とある転生者たちの戦争準備《ノスタルジー》  作者: 有坂総一郎
皇紀2590年(1930年)

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スティムソンの憂鬱

【告知】ドイツ襲撃艦コンペ開催【告知】

1930年夏に就役するドイツ襲撃艦についてコンペを開催。11月30日までの期間で応募を受け付けるので是非参加していただきたい。


活動報告「このはと」ドイツ襲撃艦のコンペ

https://mypage.syosetu.com/mypageblog/view/userid/1102207/blogkey/2449084/


大和型のテンプレートを用意しているのでそれを参考に応募して欲しい。

皇紀2590年(1930年) 3月31日 大英帝国 ロンドン


 史実と異なり、未だ戦艦の制限や規定について取りまとめることが出来ないロンドン軍縮会議だった。この会議はまとまらない問題はいくつかある。


 1、大日本帝国による満州事変

 2、英米間の感情的しこり

 3、会議参加国の意図的な合意反故

 4、欧州各国の対米不信

 5、軍縮会議という名のメッキが剥がれていること


 これらによって同意に達することが非常に困難であった。


 英米間での妥結を見た直後の日伊の戦艦交換発表など明らかに会議の妥結を誰もが望んでいないことが妥結の可能性を下げている要因であった。


 しかし、世界中からの視線がこのロンドン軍縮会議に向いているのは間違いなかった。それは若槻演説というプロパガンダによるものだった。


 若槻演説によって国際世論は軍縮会議の妥結を阻んでいるのはアメリカ合衆国だという様に錯覚させられていることも大きかった。これは特にロンドンにおいて大きな意味をなしていた。ロンドンのアメリカ大使館には週末の度に大なり小なりの抗議デモが繰り返されていたからだ。


 つまり、英米間の感情的対立による英米離間策が功を奏しているのだ。大英帝国の政界、特に議会勢力は反米の声が日増しに増えつつあった。これによってマクドナルド政権も対米妥協は困難となり、対米批判を繰り返すことに追い込まれていた。


 無論、そういう空気に触れているアメリカ側は面白いわけがない。抗議デモの度に大使館にゴミや卵が投げつけられることでストレスが極限に高められているのだ。だからと言ってデモ集団に武力行使をするわけにもいかず鬱屈としているのだから彼らの我慢も限界に近いのは想像に難くない。


 そこにマクドナルド政権の旧式戦艦の売却声明が出たのだからたまったものではない。


「フランスがクールベ級3隻をブラジルに売却することが確定した場合、アイアン・デューク級をチリとアルゼンチンに2隻ずつ売却し、南米方面の勢力均衡を図ることとしたい。これは地域の安全保障を集団で担保することで摩擦を回避し、地域の防衛力を強化することを我が大英帝国は南米3ヶ国に提案したい。また、フランス・イタリアと接するスペインにはタイガーを売却し、これによって地中海の勢力均衡を図りたいと考えている」


 地域集団安全保障という建前による南米のアメリカ影響圏からの離脱を促すそれはモンロー主義に止めを刺し、再び欧州勢力の影響下に置くという裏の意図があった。


 旧式戦艦とは言えど、列強以外では一線級の戦艦である。そんな戦艦が南米に合計して7隻も配置されることは数字上でも十分にアメリカの脅威となるのは事実だった。同時に英仏にとっては影響力を行使出来ることで実質的に南大西洋の制海権をタダで手に入れるも同然であった。


「こんなこと認められるか!」


 アメリカ合衆国国務長官ヘンリー・スティムソンは激怒していたが、どうにもならない。今のアメリカの置かれた状態は全て強欲なアメリカの欧州に対して行った仕打ちの仕返しだと言えるからだ。


 ドイツに対しては資本の撤収で経済を破綻させ見殺し、英仏に対しては賠償金の取り立て強化、日本に対しては排日移民法以来の実質的な敵視……。これらのアメリカ自身が自分たちのためにした行動は全て裏目に出ていたのだ。


「閣下、今は早急に対応を考えませんとパックス・アメリカーナの破滅を意味しますぞ!」


「そんなことは言われんでもわかっておる!」


 スティムソンは執務机を拳で思い切り叩き返答した。苛立ちはわかるがぶつけられた方はただただ迷惑である。


「イギリス外務省に抗議してきたまえ。すぐにだ! 欧州勢力は南北アメリカ大陸への不干渉が我が合衆国の方針だ……と」


「お言葉ですが、その内容でしたら門前払いされかねません。」


「構わん、だったらウチはソ連かドイツに戦艦を売るとでも脅してこい!」


 スティムソンの怒鳴り声に制された秘書官は仕方なく部屋を後にした。


「さすがに、そんなこと言えないからもっと穏便な感じにしてもらう様に伝えないと……追い詰められてから長官は普段の思慮深さを失っておられる……」


 秘書官は溜息を吐きながら駐英大使のもとへ向かったのであった。

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― 新着の感想 ―
[一言] 米国に限らず大国って、足元をすくわれすぎなんだよ。 まあ米国に至っては、油断と慢心しすぎたんだ。 自業自得というか因果応報だな。 強欲すぎたせいでいままでのツケが回ったと思う。
[一言] 実態だけを見れば、欧州情勢、アジア情勢を混乱させているのはアメリカの強欲さですものね。 ぶっちゃけ、満州事変は中華民国が満州の統治破綻した結果、日本が代役をやらざるを得ない状態になっただけ…
[一言] 米国が強欲すぎた行動せいで結果こうなってしまったのでは。 自業自得とは言わないが同情する気もない。 自分達がやったことが、完全に裏目に出て墓穴に足を突っ込んだって感じかな。
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