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この身は露と消えても……とある転生者たちの戦争準備《ノスタルジー》  作者: 有坂総一郎
皇紀2590年(1930年)

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試製九〇式艦上戦闘機<2>

皇紀2590年(1930年) 3月18日 横須賀近郊追浜


 余裕の表情の中島飛行機と挑戦者の立場である三菱航空機……彼らの対決がついに始まった。


 中島が史実キ11ベースに近い機体を出してきたが、これは明らかに格闘戦ではなく、一撃離脱を基本とした高速戦闘機であった。無論、それに合わせて機体強度もきっちり仕上げて来ていたのだ。中島はこの機体の完成度に満足しており、陸軍の九一式戦闘機の後継機の本命とも考えており、陸軍航空本部にも既に同様の書類を提示し、九二式戦闘機としての採用を打診していたのだ。


 それほどの自信を有している中島であったが気掛かりは三菱に14気筒発動機を先に越されて搭載されたということだ。これはそのまま拡張性がないと言われかねないものであった。


 平時であれば数年おきに新機種が出るため同じ機種での改修の必要性が低いが、戦時になれば戦局の推移、戦場によって改修を繰り返す必要がある。それは新型機が出来までのつなぎとしての必要なものであるが、中島の試作機は寿2型に最適化された機体設計であるため、仮に14気筒発動機や開発中の光を搭載する場合、設計のやり直しはそのまま新型機開発と同様の手直しを求められることを意味していた。


 だが、三菱の試作機は最初から14気筒発動機を積んでいるため、アップデートが可能であり、そもそも、アップデートを前提とした機体設計の可能性が高かった。無論、この中島の技術陣・開発陣の推測は正しく、三菱は巻き返しが出来るように性能アップを前提とした設計をしていたのだ。そのため本来の性能を十分に引き出しているとは言い難かった。


 また、中島試作機は決定的な問題があった。


 史実のキ11と同様に胴体こそ金属製であるが、翼は木金混合骨組にジュラルミンの外板を張り付けたものであり、沈頭鋲の採用で表面はなめらかであるが、機体強度の補強のために張線があるため、地上運用なら兎も角、空母での運用には少ならからず影響があると考えられていたが、鳳翔を除くと帝国海軍の運用する空母は3万トンを超える大型空母のみであり格納庫の容量も大きく広いことから割り切られていたのだ。


 しかし、三菱は逆に胴体も翼も全金属で整えてきたのだ。三菱は先進技術の塊であるそれを惜しみなく注ぎ込んできたのだ。結果として最高速度で負けようが技術的な進展を考えると中島試作機よりも陳腐化の先延ばしが出来るという点を突いて来たのだ。


 例えば、総ジュラルミン製の骨組に金属応力外皮の胴体、主翼に鈑ヴェヴ式の翼桁によるガーダー構造を採用し、純片持式とするなど先進性を訴えたのだ。


 海軍当局者は堅実な中島と攻めの三菱と評価が割れたのであった。だが、実際に飛行してみた時の評価によってすべては決した。


 中島機は熟成された技術と信頼度の高い発動機によって安定した結果を出し、これには海軍当局も満足だったのだ。危なげない飛行と速度性能に秀でたそれに「これで陸軍の鼻を明かすことが出来そうだ」とセクショナリズム特有の対抗意識へ充足感を与えたのである。


 対して、三菱2号機(7試艦戦相当)は急降下によって機体が分解墜落するという致命的な問題を引き起こした。だが、1号機(9試単戦相当)は速度性能こそ満足出来ない数値ではあったが、その先進性を示すことで海軍当局の興味を引いた。これによって継続審議となったが、2号機分解墜落という問題により強度不足の可能性ありと判定され強度設計のやり直しを命ぜられた。


 分解墜落した2号機のパイロットは「操縦性にガツンと来るものがあったが良い感じだった、だが、急降下させたらあっという間にバラバラになった。こんな機体では敵を落とす前にこちらが自滅する。速度が落ちてもいいから強度が欲しい……あと、操縦席に余裕があったおかげで脱出出来たがもし狭かったら手間取って死んでいた」と感想を述べたことで機体設計に操縦席の出入りのしやすさを考慮することを義務付けることになった。


 また、この事故によって圧縮空気、火薬式、バネ式など射出座席について研究が行われるようになったがその成果はすぐに出るものではなく、当面は脱出訓練と機体設計によって対応することとなった。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 全金属と混合金属 ハイローミックス戦略ができるんじゃないかと思う。 全てを全金属機では揃えれないし…
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