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この身は露と消えても……とある転生者たちの戦争準備《ノスタルジー》  作者: 有坂総一郎
皇紀2590年(1930年)

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東條は絶句する

皇紀2590年(1930年) 3月13日 帝都東京


 陸軍省においてこの日一人の軍人が佐官から将官へと昇進を果たした。彼の名を東條英機という。史実よりも3年早い少将昇進であった。同時に陸軍中央への復帰の内示が下された。歩兵第1連隊連隊長から陸軍省軍事調査部長兼兵器本廠付軍事調査委員長への転任を命ぜられたのである。


 彼の昇進が早いのは単純に関東大震災における活躍「西の丸下の英雄」と一部では称され、省利省益の壁をぶち破り被災者を救った功績を今上帝が評価し特別昇進したことによるが、その時より御上の信頼は厚いものであった。


 無論、東條の忠勤ぶりは変わらず、前世同様に御上の信頼に応えんと励んでいる。


「これで、少将……3年の余裕が出来た……この調子でいけば仮に議会政治が潰れたとしても、重臣や各省庁からの後押しで昭和15年前後には総理の座に就けるだろう……問題は近衛だ……」


 東條は陸軍省を辞した後、歩兵第1連隊司令部へ戻り、残務処理と引継ぎ準備を命じると有坂総一郎に電話で連絡を取った。


「あぁ、有坂君か……私だ。今しがた少将昇任して今度は軍事調査部長に転任を命じられた。あぁ、そうだ。それで、これから帰宅する前に君のところに寄って話をしたいと思うが……そうか、あぁ、ではこれから向かわせてもらう」


 総一郎のアポを取ると公用車に乗り込み六本木の駐屯地を後にする。


 東條は私邸を前世同様に世田谷の用賀に建築しようと考えていたが、総一郎が都心から遠すぎるから山手線の内側にしてくれと言われ渋々従ったが、折良く歩兵第1連隊の官舎に入居していたのではあるが、昇進と転任によって官舎を引き払う必要が出てきたのだ。正式な辞令が出るまでは暫くあるが、それでも急がねばならない。


 総一郎もまた新橋の私邸を有坂コンツェルンのビルへと転用することとなり、同様にこの年の初めに本邸を市ヶ谷に移転させたのである。至近には東郷元帥邸や靖国神社、陸軍士官学校などが存在し、市ヶ谷駅からもほど近い。


 総一郎がこの地を選んだのは間違いなく陸軍とのつながりを強化するためであるという意思が見え隠れするモノだった。


「全く、先年建築したばかりの新橋の本邸を潰すなど勿体ない。一言言ってやらねば……」


 東條は有坂邸へ到着すると洋館と和風二階建てで構成される屋敷を見て忌々しく思った。だが、ここの立地条件を考え、来客の層を考えるとこれほど適切なものはないと言えるだけに罪一等減だと考えることにしたのである。


 玄関ホールに踏み入れるとメイドが出てきたことに彼は驚く。


「……君は……女中であったよな?」


「ええ、旦那様がここではこの衣装だと言われまして……まだ慣れないもので……」


 メイド服を着た元女中・現メイドは複雑な表情で東條の疑問に答える。彼女もまた突然こんな格好で応接をするように言われ面くらっている。


「君も大変だな……一言アレには伝えておく……悪趣味にも大概にしろと……」


「そんな滅相もありません……その申し上げにくいのですが手当てを付けると言われておりまして……納得はしているのです……慣れていないだけで」


「そうなのか? だが……」


 東條はそこまで言って閉口した。


「東條様~♪ いらっしゃいませ~」


 奥から出てきたこの館の主の片割れの姿に絶句したからだ。

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