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この身は露と消えても……とある転生者たちの戦争準備《ノスタルジー》  作者: 有坂総一郎
皇紀2590年(1930年)

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駐英大使館<2>

皇紀2590年(1930年) 2月15日 大英帝国 ロンドン


 駐英大使松平恒雄はこの日の午前にポーランド、チェコスロヴァキア、ルーマニア、ユーゴスラヴィアそれぞれの駐英大使から抗議を受けた。


 ポーランド駐英大使はダンツィヒ問題、チェコスロヴァキア駐英大使はズデーテン及びカルパティア・ルテニア問題、ルーマニアはトランシルヴァニア問題、ユーゴスラヴィアはスロベニア・クロアチア・ボスニア問題でそれぞれ内政干渉と抗議をしてきたのであるが、松平は国是八紘一宇を理由に何れの国家も迫害を行う加害者として断じることで突っぱねたのであった。


 午後になるとフランス駐英大使、ドイツ駐英大使、イタリア駐英大使がそれぞれ訪れた。無論、用件はそれぞれの国が抱える問題についてだ。


 フランスはドイツとの緊張関係をより煽るだけであり控えるべきだと忠告をしに来たが、「帝都の陸軍省からフランス・シュナイダー社に依頼した兵器開発を破棄しても良いと言われている」と伝えると態度が変わったのである。彼らが得られるものは微々たるものであるが、支那権益分配の秘密協定の破棄すらあり得ると考えたフランス駐英大使は「我々は友邦ポーランドに配慮して抗議しに来ただけで、日本帝国との関係を壊す意図はない」と引き下がったのであった。


 無論、フランス側に土産なしで帰らせるのは都合が悪いため、軍縮会議でフランス側の肩を持てる部分は賛意を示すこともあると仄めかすことで彼らの機嫌を取るのは忘れないのである。


 ドイツ駐英大使は感謝の念を伝えに来たのだが、その際に手土産にフィッシャー・トロプシュ法(FT法)の情報を携えてきたのだが、彼らにとっても切り札となる技術だけに核心部分はなかったが、断片情報で有意義な部分を含んだものを渡してきたのだ。


 ダンツィヒ問題で大日本帝国がドイツの肩を持つ限りは有意義な情報を提供することを示したものであったが、IGファルベン社の横槍があるため核心部分の開示は期待薄だと思われている。


 夕刻に訪れたの最後の来客はイタリア駐英大使であった。ベニト・ムッソリーニ(ドゥーチェ)が若槻禮次郎と会談したいと申し込みしてきたのだ。イタリア産ワインと生ハムを土産に持ってきていたらしく、すぐに返礼が出来ないため後日伺うと伝えると会談を受けてくれたらそれでよいと言って帰っていったのである。


 慌ただしい来客を捌き切った大使館員たちだったが、イタリア大使館からの手土産で一杯やろうと松平が提案すると彼らは皆一様に疲れた表情から喜色満面となったのであった。


「……なぁ、連中、チーズはくれなかったのか?」


 松平は物足りなそうにそう言うと秘書官はすまなそうな表情を浮かべて応じた。


「ええ、チーズはありませんでした……」


「そうか……もらいものにケチをつけるのはアレだが……なんでチーズもつけてくれなかったんだろうな?」


「チーズが欲しければ会談のセットとイタリアの要求を呑めということなんでしょう?」


「食い意地が張っているわけではないが、なんだかなぁ……」

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― 新着の感想 ―
[良い点] この外交駆け引きをリアル外交官に見せてやりたいわ [一言] イタリア人はリアルでよく知ってるけど、確かに食い物ネタを取引材料にするところあるな それだけイタリア人の食生活のこだわりは凄い
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