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この身は露と消えても……とある転生者たちの戦争準備《ノスタルジー》  作者: 有坂総一郎
皇紀2589年(1929年)

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国際連盟総会

皇紀2589年(1929年) 10月2日 スイス ジュネーヴ


 8月31日に満州問題委員会に提出された3つの報告書はそのままジュネーヴの国際連盟へと運ばれ、9月5日に公表された。


 まずはリットン調査団の正式な報告書が示された。リットン報告書は序章プラス10章からなる本文で構成されていた。


 序章において満州問題委員会設置の過程を明らかにし、日本及び支那の間における紛争についての概略が示された。


 第1章では中国の最近の発達の概観、すなわち清の没落から説き起こし、共和国の出現、その後の内乱、国民党の結成、共産党の跋扈を詳述されている。


 第2章では日本が占領する満州地域について述べ、すなわち中国が満洲に無関心であり、満洲の今日の発展は日本の努力による旨を述べ、張作霖および張学良時代の政情から露中紛争等について詳述されている。


 第3章では日支両国間の満洲に関する諸論点、すなわち日本の満洲における権利を説明し、世界に類例を見ない特殊性を認識し、鉄道、商租権その他に関する諸争点、殊に事変勃発前数年間の重要問題を解説し、同時に北京北洋政府(奉天軍閥)側からの対日問題も提示されている。


 第4章では張作霖爆殺事件(田中義一特使行方不明事件)およびその後満洲で起こった事件を述べ、当時は日支両軍の間に感情が緊張し、日本は万一の敵対行為に対し周到な計画を有し、満鉄線路の爆破を蒙り、迅速かつ的確にこれを実施したが、中国側は攻撃の計画を有しなかったという仮説を排除し得ないと記し、以後の軍事行動の経過を述べている。


 第5章はソ連とコミンテルンのスパイの行動による事件発生とその後の事件への日支両軍及び官憲の行動とその経緯が記述されている。


 第6章では日本占領地の満洲地域を取扱い、まず現在の統治段階を述べ、日本の文武官の一団が、満州と支那の分離を計画し、組織したものと見なし、次に現在の満州地域における財政、教育、司法、警察、軍隊、金融を考察し、最後に在満支那人は一般に現状を支持しないと結んでいる。ただし、満州人・白系ロシア人は日本の統治を受け入れ協調していることも明記されている。


 第7章は「日本の経済的利益と支那のボイコット」と称し、支那の態度を不法と認めている。


 第8章では満洲における経済的利益を詳述し、資源および開発に日支両国の親善回復を不可欠とし、実際的見地から門戸開放を希望する旨を記述されている。


 第9章では、満洲は世界の他の地域に類例を見ないような特殊事情が多くあるゆえに、この紛争は一国の国境が隣接国の武装軍隊によって侵略されたという簡単な事件ではないことを指摘し、解決の原則および条件を掲げ、原状回復を否認し以下の条件を要望している。

  1、日支両国の利益に合致すること

  2、ソビエト連邦の利益尊重

  3、現行の多辺的条約と調和し得ること

  4、満洲における日本の利益の承認

  5、日支間における新たな条約関係の設定

  6、将来の紛争解決について効果的施設をなすこと

  7、支那の主権は一時的に凍結し日本による委任統治を認めること

  8、内部的秩序は能率ある地方的憲兵隊により、外部的侵略に対する安全保障はすべての軍隊の撤退および不侵略条約による

  9、日支間の経済的提携の促進

  10、支那の改造に対する国際的協力等を紛争解決の条件


 第10章では上の解決方法を例示的に示すために理事会に対して若干の提議を行ない、日支両国が上の解決を討議することを承認するならば諮問会議を招集すべきこと、ならびにその会議で到達されるべき協定の形態、解決されるべき諸点を説く。すなわち中央政府は満州に関する宣言書に抵触しない限りでの一般的条約の締結と渉外関係の掌握は留保されるべきこと、税関、郵便、塩税、印紙税、煙草税の事務の管理は中央政府に留保され、税収の配分については諮問会議で決定するべきこと、行政長官の一次任命権は中央政府が留保し中央政府の対外条約の履行を確保するために命令を発する権限があり、その他は諮問会議により決定し他の権能はすべて日本政府に帰属すべきことなどである。また特別憲兵隊は外国人の協力を得て組織し、満洲における唯一の武装団体とするため外国軍隊は全部撤退し、行政長官は外国人顧問を任命し、その大部分を日本人とすべきとした。


 結論として日本側の武力行使による占領は自存自衛の範囲を超えていると考えられるが、現状を鑑み有効な手段であり、他の手段による解決は事実上不可能であり、現状を追認することが各所に書かれていた。


 同時に支那(北京北洋政府)による統治の意思とその実施は明らかに薄弱であり、それを以て主権の主張は難しく、実質的な無政府状態を放置し、軍閥による恐怖政治を是認していた点を鑑みると在地住民の利益に反するため、統治行為を適切に行い得る存在は大日本帝国をおいて他になく、委任統治を実施し、しかるべき時期に支那国家へ復帰するか独立を選択させることを提案していた。


 結果、日本側に有利なものが各所に見受けられた。


 これに反発するアメリカ・トルコ連名の報告書も直後に公開されたが、明らかに恣意的に日本側を批判する文言が目立ち、尚且つ日本権益の否定が目立ったことから連盟加盟国の受けは非常に悪かった。


 また、逆にブラジルからの報告書はリットン報告書よりも踏み込んでいるもので、北京北洋政府、特に奉天軍閥の統治行為はマフィアが国家を統治している様なものだと批判を行い、それを救い出した日本を英雄視、救世主であるかのような扱いをしていた。それと同時に一方的な称賛かと思うとそうでもなく、占領前後の物流統計を示し、占領による経済発展効果を明確に示し、また、犯罪検挙率や凶悪犯罪の統計が示されていた。


 これら3つの報告書は約3週間の審議の結果、リットン報告書とブラジル報告書を基本とした勧告案が示され、国際連盟会議の圧倒的多数の賛意を得て正式にこの日勧告された。

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