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この身は露と消えても……とある転生者たちの戦争準備《ノスタルジー》  作者: 有坂総一郎
皇紀2589年(1929年)

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偽装電探基地

皇紀2589年(1929年) 6月7日 大日本帝国 朝鮮総督府領沖


 27年に戦艦日向が黄海を航行中に触礁事故を起こしたことで発見された”日向礁”。その日向礁に海洋観測基地の建設を開始することとなった。これは黄海における電探哨戒拠点として設置することを目的とした欺瞞工作の一環である。


 現時点での電探の開発においては史実の超短波警戒機乙の劣化版程度の水準は完成しており、索敵範囲50~80kmは確保出来てはいた。また、史実の超短波警戒機甲の開発もほぼ完了し、これによって確実に飛行物体が捜索線上を通過したことが検知出来るようになっていたが、如何せん、飛行物体を検知するだけで、何機がどの方角に飛んでいるかまではわからないのである。そのため、動作確実で小型・木製でも発見しやすいという特性があってもあくまで要地における定点観測用と割り切る必要があった。


 だが、甲と乙を組み合わせることで早期警戒システムを構築することが可能であり、甲で探知し、緊急離陸(スクランブル)した迎撃部隊を乙で誘導することで実際に九州方面での防空戦は比較的有利に戦うことが出来た。


 そして、その警戒拠点として朝鮮半島、済州島、五島列島、対馬が選ばれているが、それと同時に暗礁地帯であり海上施設の建設が容易である日向礁を開発することでそこに前進拠点を築こうと考えられたのである。


 無論、海上施設であるため一般人やスパイが近づきにくいこともあり秘密保持に最適であるという理由もある。


「田中角栄が居ればなぁ……」


 有坂総一郎は呟く。


「角栄さんって……元祖日本列島改造の?」


 有坂結奈は総一郎の呟きに応じる。彼ら二人は帝都東京の自邸にて工事のタイムスケジュールを見ながらお茶を飲んでいた。現地の作業船では杭打ち工事などが始まっている頃だった。


「あの人が元祖ならうちは本家かね?」


「二番煎じでしょう? やっていることはあの人の真似ですものね。新潟の小学校に在学している頃じゃなかったかしら?」


「あぁ、まだ小学生高学年くらいか……彼がコンピュータ付きブルドーザーとして活躍するのはまだ早いかぁ……」


 田中角栄……今は満11歳……如何に頭脳明晰な人物だと言ってもまだ活躍するには早い。もっとも、有坂コンツェルン出資の育英資金の拠出対象として彼の実家の経済状態は史実よりも良くなってはいた。


 史実において彼は話が付いていると思って上京したら有耶無耶になっていて仕方なく住み込みで働くなど苦労にたえなかったのだが、この世界では土木関係の進学先を用意してあったが、彼にはそれは伝えられていない。


「囲い込みはしているけれど、過度に介入すると彼本来の持ち味を潰しかねんからなぁ……そこが難しい……」


「大人を囲い込むのと子供を囲い込むのでは訳が違うもの。与え過ぎるのは良くないわ。彼の場合、どん底から這い上がってきたから”今太閤”と呼ばれるに至ったのだから過度な介入は絶対に下策よね」


「彼がもう少し早く生まれていたらもう少し歴史介入が楽なんだがなぁ……こっちが何かヒント出さなくても勝手にやってくれるだろうし」


「それって貴方の敵になるパターンよね……大角海軍大臣みたいに……」


「だろうね」


 だが、二人の田中に対する期待はやはり高いものであった。後年、彼は有坂夫妻の読み通り、10代後半からメキメキと頭角を現し、史実を上回るスピードで出世していくのである。

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