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この身は露と消えても……とある転生者たちの戦争準備《ノスタルジー》  作者: 有坂総一郎
皇紀2588年(1928年)

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切り分けたられたパイの分け前

皇紀2588年(1928年) 12月25日 大英帝国 ロンドン


 大日本帝国全権団はこの日やっと大英帝国に対して交渉における条件を提示するに至った。


「我が大日本帝国は大英帝国に遼河油田の一部採掘権を認め、同時に営口に租界を設置することを認める。また、北支と満州の結節点にあたる山海関における停戦及び現状維持の監視のために秦皇島に1個連隊規模の英軍の駐留を希望するものである」


 この条件は先にブレナム宮殿における秘密会談で決まった条件と合致するものだった。


 無論、ウィンストン・チャーチルはこの条件については一切大英帝国外務省には伝えておらず、外務省の想定していた条件よりも遥かに好条件であったのだ。外務省の想定では採掘権の譲渡すら突っぱねてくるだろうと考えていただけに望外の条件に呆気に取られてしまったのだ。


「我が帝国は大英帝国が国際社会に対して斡旋を行い、満州における大日本帝国の特殊利権を認め、同時に北西満州を不法占拠するソ連赤軍の撤収を求める様、外交圧力をかけることを期待するものである」


 松平恒雄大使の提示条件は簡潔であった。


「また、満州の定義は大興安嶺以東、万里の長城以北とし、それ以外の国境は従前の通りであると確認願いたい」


 松井慶四郎大使は満州の領域について補足を忘れなかった。


 日本側の明快にして簡潔な要望と英国側が想定したよりも譲歩している条件は英国側に交渉継続の意思を失わせたのであった。その場でオースティン・チェンバレン外務大臣は協定案にサインを行い、両大使に握手を求めた。


「日本側の示した条件に我々は文句のつけようがない。これを拒めばそれこそ笑いものになるだろう。だが、ひとつだけ注文がある」


「どうぞ」


 チェンバレンの提案に松平は応じた。


「秦皇島の駐留に関しては我が大英帝国からの提案とさせていただきたい。その方が貴国にとって利益となるだろう。今のままでは日本側が支那というパイを勝手に切り売りしているイメージとなる。であれば、支那の国益を守るために我々が間に入るという体裁を整えるのが適当だろう……如何か?」


 チェンバレンの提案は魅力的であった。結果は同じであっても、国際的なイメージが変わってくる。英国側にしてみれば支那に恩を売る形になる上に、日本側は支那領土の分割を提案したという実態を偽装出来るのだ。


「では、どうだろうか……大英帝国から共同で監視するという形でフランス、イタリア、そして合衆国に声を掛けるというのは? かねてより門戸開放を訴えて五月蠅い合衆国を巻き込むのであればより正当性を担保出来るのではないだろうか?」


「では、我が国から各国には声を掛けてみよう……フランスとイタリアは同調するだろう……彼らがごねたら北洋政府から代わりの土地でも差し出させるとしよう」


 チェンバレンはそう答えると交渉は妥結したと宣言した。


「では、ここからは我々大英帝国の仕事だ。任せ給え」


 欧州外交の調整役である彼の瞳はやる気に満ちていた。

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