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この身は露と消えても……とある転生者たちの戦争準備《ノスタルジー》  作者: 有坂総一郎
皇紀2588年(1928年)

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英米に楔を

皇紀2588年(1928年) 12月20日 大英帝国 ウッドストック ブレナム宮殿


「いえ、支那においての是非注意していただきたい案件でして、これは大英帝国の国益を損ねかねないものですのでお耳に入れておき、善処していただきたいのです……もし、支那で中央銀行が現銀を回収し始めた際は徹底して抵抗をお願いしたいのです。その裏で合衆国が糸を引き、大英帝国の通貨価値を毀損することとなり、結果、合衆国に大英帝国の富を吸い取られることになると……」


「なんだと!?」


 東條英機の言葉はウィンストン・チャーチルの顔色を青ざめさせた。


 史実におけるアメリカの銀買上法とその後アメリカの策謀によるに支那経済の支配というカラクリの暴露である。


 1929年、アメリカで始まった世界大恐慌が発生すると、ルーズベルト大統領(大魔王)は34年に銀の回収を定めた法律(「銀買上法」)を議会で通過させ、財務省による銀の備蓄・退蔵が行なわれた結果銀の国際価格が大幅に上昇した。


 アメリカによる銀の退蔵政策は、当時世界第3位の銀本位制国家だった中華民国(支那)に大きな影響を及ぼしたのである。大量の銀が国外に流出・デフレと利息の急速な上昇により銀行が臨時休業を行なうなど、金融破綻が懸念される事態となった。このため35年11月に国民政府は、銀国有化と紙幣の使用強制を義務化することを布告したのである。この時の銀の流出先はその殆どがアメリカだった。


 これによって銀本位制の銀円に代わるものとして不換紙幣を発行し、中央・中国・交通・中国農民のこれら4銀行の発行する紙幣のみ流通を認め、それ以外の銀行が発行する銀行券は期限を定めて回収したのである。


 市場の銀円は国庫に帰納させ、1法幣=1銀円の等価交換方式を採用、外貨との関係は、イギリスポンドにリンクし、35年11月4日の公定為替相場は、1元につき1シリング1ペンス1/2、100元につき米ドル29ドル3/4、100元につき日本円103円であり、無制限に売り応ずることとされたが、銀準備は、法幣に対しては払い出されない管理通貨方式であった。


 だが、当時の支那は紙幣への信用が概して低かったこともあり、殆どが現銀の流通であったこともあり銀国有化と紙幣流通への一本化は、各方面に混乱と反発を生んだのである。


 この混乱に頭を悩ました国民政府がアメリカと協議した結果、中国よりアメリカへの銀の輸出を認める代償として、アメリカドルを法幣発行に必要な準備外貨とし、これにより法幣はアメリカドルとの固定相場を採用することとなった。


 だが、この時の影響はイギリスに大きく影響を及ぼし、結果、通貨価値の下落へとつながったのである。そして、それはそのままイギリスとアメリカの関係の逆転に直結したのである。


「そんな話は聞いておらんぞ……」


「今、蒋介石は必死に立て直しを図っているでしょう。であるならば、提携先はどこになりますか? ソ連ですか? それともドイツですか?」


「ソ連はない……ドイツは我々が関係断絶を迫った以上有り得ない……そうなるとアメリカか……」


「ええ、ですが、アメリカもタダで協力などしないでしょう……。そこで考えられるのが通貨改革です。今の支那において流通している通貨はその殆どが現銀……しかも、支那の通貨などジャンク扱いも良いところ……ですが、現銀だけは信用があります。そうなれば銀の流出、銀の売却へといずれ繋がりますでしょう……」


「通貨信用力と金銀の準備高……大英帝国とアメリカの関係の逆転……か……」


「注意してもし過ぎることはありません……」

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