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この身は露と消えても……とある転生者たちの戦争準備《ノスタルジー》  作者: 有坂総一郎
皇紀2588年(1928年)

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大義名分

陸軍としては海軍の提案に以下略

https://ncode.syosetu.com/n6461eq/371/

ロータス氏提供のファンアートに挿絵を差し替えたので、時間がある方は再度御覧になって頂けると幸いである。


海軍としては、作者の提案に反対である! 陸軍優遇が度を過ぎていると抗議する!

皇紀2588年(1928年) 11月30日 満州 長春


 かつて伊藤博文が朝鮮人テロリストに暗殺されたハルピン駅には放置された機関車や客車が構内に散見され、貯炭庫の石炭は略奪に遭い底を突き、駅舎の備品も同様に略奪によって荒廃するままとなっていた。


 亡命ロシア人系の企業や商店などは事変勃発とともにハルピンを脱出し、早い段階で日本側の勢力圏に逃亡し保護を受けていたが、残された財産は尽くが残留した住民や張軍閥によって略奪に遭い、襲撃の爪痕を色濃く残していた。


 統治行政機構は既に崩壊し、文字通り世紀末、無政府状態と化したこの町は力による恐怖がモノを言う世界となり果てていた。


 しかし、それももはや限界に達していた。


 本格的な冬が始まり、市場が崩壊し物資が欠乏したハルピンにおいて軍民問わず餓死者が出始めていたのだ。


 近くの農村などは村民揃って南へ逃げ、奪われるくらいなら燃やしてしまえと農地を焼き払ったことでハルピン郊外の農地からの収穫がこの秋はゼロとなり、食料の供給が完全に絶たれたからだ。


 いよいよ略奪による延命も限界に達したハルピンの住民は家財道具すら捨て、線路伝いに東方、南方へと逃れようとしたが、同じく飢えている張軍閥の残党によって襲撃され、逃げ切れなかったものの多くが彼らの食料として文字通り食われてしまったのだ。


 飢えた彼らは逃げ出す力がない者たちを襲いだすという暴挙に出た結果、地獄絵図が市内各地で繰り広げられることとなった。


 だが、それは意図的に引き起こされていた。


 日本側は現状では占領地における資源確保、市場再生、治安回復が優先され、北満州については後回しにしていたのだ。だが、帝国陸軍に侵攻の余力がなかったのかというと、そうでもなかった。


 鉄道網の整備によって、軽便鉄道を用いる区間があっても鉄道輸送は大連-ウラジオストク間で問題なく行えるようになっていた。これによって物資集積も部隊移動も可能となり、北満州への侵攻も10月末ぐらいには可能となっていたのだ。


 しかし、それでも帝国陸軍の各部隊は動かなかった。


 そう、大義名分が出来るまでは。


 ハルピンにおいて張軍閥が住民を襲いだすというこれ以上ない大義名分が出来るまで故意に放置を続けたのである。


 国際社会に満鉄権益保護・周辺地域の保障占領という建前での出兵を行った都合上、これ以上の侵攻を継続することは大英帝国が黙認しているとしても難しかった。


 だが、無法な行為によって民が苦しんでいて、それを救出するという大義名分が出来てしまえば北満州への侵攻に表立って文句をつけることは出来なくなるからだ。


 まして、張学良は北京に脱出して以後、満州に対して何ら手を打っていない(無論、打てないように山海関を抑えたのであるが)ことによって国際社会からの満州への主権に対する疑義が生じていることも有利にする条件の一つであった。


 そして、日本側が待ち望んでいたハルピンからの大量脱出と軍閥残党の人肉食のための住民虐殺という大義名分が揃ったことで遂に動く機会が訪れたのだ。


「これより、ハルピン住民を救援するため関東軍は出動する! 時を同じくし、浦塩派遣軍、朝鮮軍も行動を開始する。ハルピンを制圧し、その勢いで北満州全域に秩序を回復させるのが我が軍、我が帝国に課せられた使命である! 各員一掃奮励努力せよ!」


 関東軍司令官武藤信義中将の号令とともに先発隊である装甲列車が長春駅を出発した。

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