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この身は露と消えても……とある転生者たちの戦争準備《ノスタルジー》  作者: 有坂総一郎
皇紀2588年(1928年)

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謀略を覗けば謀略もまた覗いている

皇紀2588年(1928年) 9月25日 アメリカ合衆国 ワシントンDC


「チャイナに油田があるだと?」


 駐英日本大使館からの機密電はアメリカ国務省情報部によって解読されていた。この解読情報はすぐさま国務長官フランク・ケロッグに伝わった。


 史実ではこの年にパリ不戦条約が締結されていたが、支那における動乱によって日英仏の交渉会議の延期が決定され、史実における彼の功績は水泡に帰していた。


「ええ、英国からの情報を得た駐英大使は本国に問い合わせの打電があり、御覧の通りの解読結果となっております……ただ、英国側もどこにあるのか、それについては詳細不明であるとのことです」


 情報部のスタッフによる報告も解読した情報の裏を取ろうとしていたが確たる証拠は掴んではいなかった。


「チャイナに油田があるとしても不思議はあるまい。だが、彼らに採掘能力があるとは到底思えん」


「いえ、それが日本の商社が我が国企業から採掘機械を一式で輸入していた事実は掴んでおり、実際にオハ油田……今は北斗油田ですか、そこでの採掘量は順調に伸びているとのこと。それを考えますと、中長期的に投資が続けば十分な採掘が可能になるのではないかと……位置も埋蔵量は不明ですから正確には申せませんが……」


「今後も日本の在外公館の機密電の監視を怠るな……あと、英国の機密電の解読を急がせるのだ。ここ暫くは英国に出し抜かれてばかりだ……必ず尻尾を掴ませろ。特に駐日英国大使館とチャイナの在外公館からの機密電は見逃すな!」


「はっ」


 ケロッグは部下に指示を出し、退出を命じると自身のデスクに散らばる解読文を集め再び目を通す。


――チャイナのどこに油田があると言うのか……日本の勢力圏は満州とノースチャイナ……英国は香港と上海、天津と点在している……日本の性格上、満州にある利権を譲渡するとは考えられん……となれば上海か? それとも青島か?


 ケロッグの想像はかなり正解に近かった。


 青島を中心とする山東半島は列強の権益が集中していることで大英帝国にとっても重要な地域だ。特に山東半島の先端に位置する威海は租借地がある。


 そして、蒋介石の北伐を断念させた膠州殲滅戦などは日英独を中心とする列強混成軍による功績が大きく、それが故に北京北洋政府は山東半島における実質的な統治権を喪失し、列強による分割占領が行われている。


――山東半島は既に日英独による分割占領が行われている。北京にもほど近い山東半島の優先的な権益確保と引き換えに、日本の満州の優先権を認めるとすれば理屈が通る……。だが、そうなるとドイツは蚊帳の外となるが……敗戦国のドイツに発言権などないのだから戦前の膠州湾租借を認めることで丸め込むことも容易か……。


 この時、ケロッグは日英による支那大陸分割という可能性に気付く。最後のフロンティアは中支那、南支那しか残っていなかったのだ。しかし、南支那は英仏が根拠地を構えており、中支那は上海・南京に列強各国が租界を持ち談合状態である。


――積極的にチャイナに進出しようという考えがあるわけではないが、列強が我々の最後のフロンティアを荒らすのをみすみす見逃すのは癇に障る。なんとか妨害せねば……仮に日本が満州を制圧しても英国と協調させなければ付け入る隙はいくらでもある……。


 大統領選を控えた退任間近なケロッグは自分の任期中にアメリカ合衆国の国益を損ねる列強の動きは阻止する気満々であった。少なくとも、日英の接近をこれ以上許すつもりは彼にはなかったのだ。

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