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この身は露と消えても……とある転生者たちの戦争準備《ノスタルジー》  作者: 有坂総一郎
皇紀2588年(1928年)

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遼河油田の存在を非公式に認める

皇紀2588年(1928年) 9月15日 帝都東京


 ロンドンの駐英大使館からの届いた大英帝国からの提案は帝国政府を震撼させた。


 この時、満州における油田の存在(の可能性)を知るものは満鉄の上層部、鉄道省上層部、東條-有坂枢軸、そして革新官僚の一部だけだった。


 それゆえに帝国政府、特に外務省は蜂の巣をつついたような騒ぎとなっていた。


 非公式な打診とは言え、大英帝国からの権益次第では肩を持つというそれは帝国政府にとっては事変拡大による事態収束にとって追い風となるのは間違いなく、国際社会の非難を緩和する効果があるだけに魅力的過ぎる提案であった。


 満鉄はこの時点では有望な試掘井をいくつか遼河油田に確保しており、機材が届き次第本格的な採掘を開始する段取りとなっていた。だがそれを止めていたのは満鉄と有坂コンツェルンの秘密協定によるものであり、事変が落ち着き、張学良らが介入出来ない状態になってからの採掘開始とされていたからだ。


 8月下旬には機材が大連から到着し、採掘が開始され、原油パイプラインも鞍山の製鉄所から次々と運び込まれ、9月7日には満鉄本線の沿線である遼陽にパイプラインが開通していた。この突貫工事には比較的手すきとなった工兵部隊を満鉄が借り受ける形で動員していたのだが、鉄道連隊による軽便鉄道の敷設もあり順調に工事が進んでいたのだった。


 結果、ロンドンで駐英大使松井慶四郎が秘密提案を受けていた頃には本国が知らない状態であったが準備は整っていたのだ。


 しかし、遼河油田から遼陽にパイプラインが引かれたのは理由があった。遼河油田から沿岸部の営口までは百数十キロあること、営口の港湾施設が貧弱なことが問題視され、満鉄附属地という絶対不可侵の領域に原油を運び込むことで安定輸送を見込んだからだった。また、ここに製油所を開設することで石油製品の鉄道輸送が可能となることのメリットを考えたのである。満鉄にとっては貨物輸送が増えることで貨物収益を確保するという側面もあったのだ。


 だが、開発が実際に始まったばかりであり、それほど大規模な採掘が出来ない現状から言えば輸出するよりも満鉄の機関車の石炭炊きから重油炊きに改造して使用するくらいの採算性だと考えても良い。


 9月11日に満鉄総裁山本条太郎は政府によって召喚され、満州における油田について内閣から聴取が行われたのが13日のことであった。この時に山本は非公式であるが政府に対して満州で石油が出ることを伝えた。


 この時、鉄道大臣仙石貢も同様に満州における石油開発を認め、音頭を取っているのは有坂コンツェルンであり、出光商会も参画していると明言したのである。この仙石の発言で有坂総一郎も召喚され、閣議は深夜にまで及んだ。


「どことは言いませんが、満州では他にも石油の出るところはあります。そして、山東省にも石油は出る場所があると我が社では独自に調査しております……この情報を活かすも殺すも帝国政府次第……。ただし、油田開発は必ず外資の助力が必要です……その相手は英国が望ましいと考えます」


 総一郎は驚きの表情を見せる閣僚を前に言い切った。


 その時の仙石の表情は「そのカードを切るのは早いんじゃないか」というものであった。

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