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この身は露と消えても……とある転生者たちの戦争準備《ノスタルジー》  作者: 有坂総一郎
皇紀2588年(1928年)

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1928年世界情勢<1>

皇紀2588年(1928年) 8月18日


 大日本帝国を動かす諸勢力はそれぞれの思惑が交錯させつつも国策の方向性を探っている。


 統制主義による重点的産業育成を望む商工省、財界と協調しつつ財政健全化を望む大蔵省、列島改造による交通革命の恩恵を得て国力の増強を狙う鉄道省、そして各派が入り乱れる陸軍省、艦隊派と条約派の均衡による不気味な静けさと造船施設拡充によって海軍力整備を狙う海軍省……。


 皆が皆、己の欲望と信念に従って帝国という国家を牽引している。


 今はまだどの勢力もベクトルはバラバラであるが少なくとも前進する方向性で牽引しているためその時々の勢力図でふらふらとしていながらも一歩一歩前進している。


 だが、誰かが少しでもベクトルをずらすとそれはたちまち停滞または四散する結果が見えているが、そこは各勢力の駆け引きによって絶妙な均衡を保っていた。


 その均衡を崩すような真似を画策しているのが東條-有坂枢軸であるが、彼らとて個々の分野での成果は間違いなく出しているとは言えど、全体を俯瞰してみるとそこかしこに粗があり、その粗が歴史を狂わせているのだと当人たちは未だ気づいていない。


 ドイツではナチ党が虎視眈々と政権奪取の機会を窺っているが、帝政復古派もそれを容易に認めることはなく牽制し合っている。だが、こと共産党、社会主義勢力に対しては一丸となって排斥の動きを見せることでドイツ政界は明らかに右傾化が顕著となってきている。


 その台風の目はヘルマン・ゲーリングである。


 彼は亡命先から帰国したばかりであるが、史実と異なり、冷や飯を食うことなくナチ党ナンバー2の地歩を固めつつあった。これは有坂コンツェルンからの資金供与による政界工作の結果であった。同時にクルップ社、ダイムラー・ベンツ・アリサカ社などによる後ろ盾もあり、財界の支援の下で政財界とのパイプ役としてナチ党にとってなくてはならない存在となっていたのだ。


 彼はナチ党の党勢拡大だけでなく、帝政復古派とも連携し、ナチ党の政権獲得後には帝政復古の可能性も示唆し、秘密裏に亡命皇帝へ帝位復帰を要請し、その信任を得ていた。


 パウル・フォン・ヒンデンブルク大統領率いるドイツ政府は海軍力の充実を図るために当初計画の装甲艦を中止することで襲撃艦というミニ巡洋戦艦の建造を開始し、大英帝国の黙認によって旧式艦艇の刷新を図っていた。無論、大英帝国が黙認した表向きの理由は対ソ海上封鎖であった。


 これに刺激されたフランス海軍はマジノ要塞線建造に費やされている予算配分の見直しを要求し、同時に就役間もないノルマンディー級戦艦の改装をフランス政府に要請し、対独国境優先のフランス陸軍と深刻な対立を引き起こしていたのである。

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