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この身は露と消えても……とある転生者たちの戦争準備《ノスタルジー》  作者: 有坂総一郎
皇紀2588年(1928年)

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自重と躊躇は辞書にない転生者

皇紀2588年(1928年) 8月4日 帝都東京


 第一連隊を指揮するようになった辺りから東條英機大佐は色々と忙しくなり、なかなか会うことが出来なくなったことで歴史介入に関しては概ね事後承諾という形で有坂夫妻にゆだねていた。


 その結果、有坂総一郎の暴走……男の浪漫という名の趣味全開……を許してしまい、その結果、東條の指摘する通り八八式戦車など揃えることが出来たであろう時間と資源を無駄に浪費してしまったのだ。


「八八式戦車の量産は時期的な問題で出来ないかもしれんが、既存の野砲や榴弾砲くらいは量産出来たのではないか……そう思うのだがね?」


 東條は重ねて批判する。東條がここまでキレているには理由がある。


 総一郎は前年の東方会議で商工省との関係改善によって冶金技術の向上という国家目標が出来たことを良いことにドイツ・クルップ社から技術導入を行うとともに列車砲に関する研究資料を入手し、それを基に列車砲の改良と増産体制を整えていたのである。


 大口径砲の生産ラインを造り、しかも、8インチ砲の増産が可能になったと鈴木貫太郎大将や平賀譲少将を経由して海軍省に売り込みをかけていたのだ。これによって海軍砲と列車砲の共通化を図ることでコスト低減も図ったのである。


 また、10インチ砲の可能性も示唆し、海軍内の予備研究資料を入手するという行動もしていたのだ。


「貴様の独断専行で列車砲を8インチから10インチにすることも可能になった。要塞砲の導入検討も省内ではしていると聞く。だが、その研究や資材を他に回せばよかったのではないのか?」


「商工省の岸さんも機材導入などで協力してくれましたから……」


「その代わり、鉄道省や大蔵省が抗議をしていると聞くぞ……鉄の供給量が減った、外貨が物凄い勢いで消えたとか……頼むから少しは自重してくれ……そうでないと戦をする前に国家が破産してしまう」


 東條の目はフラットだった。


 国家行政を一手に引き受けた戦時宰相の脳裏にはガダルカナル以後の破滅的な資源の奪い合い、船舶の奪い合いがフラッシュバックしていた。それが今この時点で盟友たる総一郎によって引き起こされていると認識されていたのだ。


「それほど不味かったですかね?」


「貴様のバランス感覚はどうなっておるのだ! 一度目を覚ませ。ブレーキ役がいないと貴様は暴走するとよくわかった。結奈君は一体何をしておったんだ……」


 東條は頼りにしていた有坂結奈がブレーキ役として機能していなかったことに頭を抱えた。


「閣下、旦那様に自重なんて言葉があると思いますか? 私も大変でしたのよ……クルップへの支払いが思っていたよりも多くてその後始末で旦那様のブレーキ役になんてなっている暇がなかったのですから……この人、こんな秘密計画書を作って更にやらかそうとしていたのですから」


 結奈は東條に秘密文書を手渡す。


 先日、総一郎が鍵付き引き出しに仕舞いそこなってバレて大目玉を食らったものだった。


「なんだ、これは……」


 東條は目を通すと絶句した。

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