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この身は露と消えても……とある転生者たちの戦争準備《ノスタルジー》  作者: 有坂総一郎
皇紀2588年(1928年)

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339/910

有坂邸、強襲さる!<2>

皇紀2588年(1928年) 8月3日 帝都東京


 皇道派の首魁、荒木貞夫中将の突然の強襲に動揺を隠せない有坂総一郎だった。


――英雄将軍(荒木のオッサン)の目的は一体何なんだ?


 なんだかんだでセキュリティには気を付けていたつもりだった。甘粕正彦にA機関を作らせ護衛と諜報を行わせていることである程度外敵への備えは出来ていたはずだった。


――まさか、丸腰で吶喊してくるとか思わないって……。


 内心の動揺を必死で抑えつつ客間に戻ると荒木はポットから湯を注いで茶を作っていた。


「有坂よ、これは魔法瓶だと思うが、なぜケーブルが付いておるのだ?」


 面白そうなモノを見つけたと荒木は触ってみていた。


「閣下、二重構造で保温性はありますが、魔法瓶とは違います。どちらかと言えば電熱線で加温する保温機能付きヤカンですよ」


 所謂電気ケトルである。電気ポットの開発に難航していることもあり、それなら保温持続性を切り捨てて加温機能を優先すればよいと、必要な時に沸かせば良いと割り切って作った試作品である。


「まずは一献……」


 荒木はグイッと飲み干すと御猪口を差し出す。もう一度注ぐと今度は味わう様に飲み干す。


「やはり美味い……だが、なかなかこの酒は手に入らん……」


「まだ生産量が多くなく、市場に十分に出回っておりません故……今はこれの素晴らしさを広めるために財界、軍部、省庁を中心に薄く広く流通させております。まずは、美味い酒であり、また欲しいという認識を広めなければ、良い酒でも造り手が理解してくれないのですよ……」


「なるほどな……貴様はそうやって皆の意識を変えておるのだな……思えば、貴様のとこの八七式自動小銃……シベリア出兵の時には世話になったのぅ……あれがなければ、あの時にあれほどの弾薬を供給出来なければシベリア出兵は失敗に終わっておっただろう……」


 荒木は御猪口を傾けながらしみじみとそう語る。


「あの時、ワシは思ったのだ……欧州大戦での塹壕戦や日露戦争の旅順でもそうだが、いかに多くの火力を敵にぶつけるか、いや、ぶつけ続けるのか、そしてより強力な支援火力がなけれならないと……」


「確かに私もあの時は赤字覚悟で納入し続けました……欧州での戦を考えれば戦場では物量こそものを言うと認識しておりましたから……」


「だが、自動小銃の欠陥や構造に困らされることも多かったが、今ではその問題も解決した。まぁ、調達価格が三八式歩兵銃よりも高いのが問題で未だ調達が追いつかぬが……なんにせよ、歩兵の火力増強はこれでいくらかは改善された。だが、問題は支援火力だ……」


 荒木は表情を曇らせる。


「永田から聞いた。貴様のところと技術本部(技本)が裏でコソコソとあれこれと造っているのだとな。そして、それがあったらばこそ満州に関しては万全の備えが出来た……」


「閣下、それは軍機に……」


「なに、ワシの独り言だ……それに貴様そのものが軍機みたいなものではないのか? あれこれと陸軍と商売をしておるくせに、今更ではないか……そして、ここは防諜がしっかりしておる。外におる特務機関の連中はよく訓練されておるな……一見して気付かなかったが、軍人特有の歩き方でわかった。癖を直すように伝えておくが良い」


 総一郎は再び絶句する。


――東條さん以上にこのオッサン(英雄将軍)は鋭いところに目がいく……。誰だよ、このオッサンが無能だとか言った阿呆は……史実と全然違うじゃねぇか!

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