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この身は露と消えても……とある転生者たちの戦争準備《ノスタルジー》  作者: 有坂総一郎
皇紀2588年(1928年)

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日本の装軌車両の夜明け

皇紀2588年(1928年) 6月28日 大阪 陸軍造兵廠大阪工廠


 帝国陸軍は戦車という欧州大戦において活躍した新兵器について今後の戦争で大きく影響を及ぼすと考えてはいた。だが、その具体的な使い方については未だ手探り状態であった。


 陸軍上層部は戦車の出現には衝撃を覚えていたが、そもそも塹壕戦という問題にも対処する必要があり、それには機関銃の量産配備、長大射程の新型砲の開発なども必要となっていたのだ。


 つまり、必要性はあるが、目の前にある他の事象にも目を向けなくてはならなかった。


 そんな中発生したのがシベリア出兵であり、有坂コンツェルンによる新型銃火器の供給と軽装甲トラックによる機動戦と塹壕戦という戦術の革新だった。


 そこで現地の浦塩派遣軍は軽装甲トラックによる機動戦は効果的な反面、標的にもされやすくその損耗の大きさを問題視していた。そのため、本格的な装甲車両の開発導入を求めた。


 だがしかし、欧州大戦が終結したばかりであり、大戦時の中古戦車はそれなり余剰だったが、問題は戦争の終結による軍事予算の縮減、そして海軍軍縮の影響による陸軍軍縮も重なり装甲車両の調達どころではなかった。


 しかし、その戦訓は史実と異なり、機動戦の研究とそれに適した車両の研究開発は確実に進んでいたのだ。


 その中心が原乙未生であり、その後ろ盾が東條英機や有坂総一郎であった。無論、陸軍にはカネがないこともあり、装軌車両を保有運用する陸軍にその運用整備ノウハウを伝授してもらうという名目の元、有坂コンツェルンから資金を融通することで陸軍技術本部は装軌車両の研究を行うことが出来たのである。


 関東大震災、続く帝都再興、列島改造論による土木機械の需要増によって陸軍制式の土木機械は有坂重工業や三菱重工業などにライセンス生産されることでこれの企業群に装軌車両の製造ノウハウ蓄積に繋がったのである。


 この一連の流れを当の東條や総一郎らが当初から狙っていたかと言えば、偶然による部分も多分にある。当初は完全に有坂重工業の製品として考えていたが、陸軍技術本部の誰かが陸軍制式にしてしまってライセンス料を取ると陸軍の金欠が少しは改善するのではないかと言い出し、その気になった陸軍省はライセンス料だけでなく生産に係わる顧問料まで要求したのである。


 このことに三菱側はあまり良い顔をしなかったという。だが、有坂コンツェルンが応じたことで商機を失うよりは顧問料を支払って完全内製化出来た段階でライセンス返上するというところで割り切ったようだ。


 この経緯は史実とは違い、三菱の戦車製造だけでなく土木機械製造経験を早期に積ませることとなったのだ。これは後に大きく影響することとなる。


 欧米の農耕機械の開発という情報を仕入れていた三菱は装軌車両の開発ノウハウをこれに活かせないかと考えていたのだ。とある人物との出会いもあり、後に農耕機械の開発と生産は三菱本体から切り離し別企業に委託することとなるのだ。世に言う佐藤造機……後に三菱佐藤農機となる農機具メーカーの誕生につながる。


 これによって、第一次産業の機械化の促進と大規模圃場整備の目処が付いたことは総一郎独力では出来なかった快挙である。


 もっとも、これはもう少し先の話であるが……。

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