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この身は露と消えても……とある転生者たちの戦争準備《ノスタルジー》  作者: 有坂総一郎
皇紀2588年(1928年)

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出兵命令

皇紀2588年(1928年) 6月19日 帝都東京


――張作霖遭難す、田中特使の安否不明。


――関東軍は治安維持、満鉄附属地の安全確保のために出撃を要請す。


――航空偵察により皇姑屯駅付近で爆発炎上、脱線した特別列車を発見。


――奉天軍閥、奉天市内に戒厳令を発令、満鉄運行に制限を要請。


 ひっきりなしに続報が届く参謀本部は活気づいていた。作戦室には満州全体の地図が広げられ、関東軍から届く情報がメモとして張り付けられていく。


 同時に浦塩派遣軍、朝鮮軍、関東軍の展開状況も一目でわかるように駒が配置されている。


「我が第一部は事前の作戦計画に従い出兵を望むものである。今こそ満州を抑える好機、奉天軍閥が混乱している今こそ各軍を進出させるべき!」


 荒木貞夫中将は作戦を担当する第一部長として主戦論を主張する。


 彼は部下の小畑敏四郎大佐とともに永田鉄山大佐の根回しによる満州制圧作戦を準備してきた。それゆえ、事前の準備によって優位に展開出来る戦局が期待される現時点での攻勢を主張したのである。


「荒木部長、関東軍などの配備は万全ではあるが、兵站に不安がある現時点での出兵は拙速過ぎるのではないか?」


 第二部長松井石根中将は前のめり過ぎる荒木らに慎重論を展開する。


「松井部長は反対なのか?」


 荒木は松井に考えを質す。


「いや、出兵は必要ではあると思うが……満鉄線の運行が確約出来なければ兵が飢える。弾薬補給も出来なくなると指摘しているだけだ」


「何のための装甲列車であると? 各軍に配備されている装甲列車を先頭に貨物列車を運行すれば良かろう。また、補給線を狙うのであれば装甲列車によって掃討すればよいではないか」


 小畑は松井の心配に問題ないと主張し、装甲列車の運用で補給線の維持は可能であると答えた。


「奉天軍閥が北京の北洋政府と連携する前に壊滅させることが出来れば山海関から東は全て確保出来るというもの。拙速と仰るが、それこそ尊ぶべきものではありませんか」


 永田は小畑を援護する様に早期出兵で満州全域を確保出来る好機と主張する。


「また、田中特使も消息不明である今、身柄の確保という意味でも早期に出兵する意味は大きい」


「政府は未だ反応を示さんが、今やるべきことをやらんでは居留民保護など出来ようはずがない。南京の悲劇を再び繰り返すのか?」


 荒木ら一派の主張に迎合するかのように、降って湧いた好機を活かすべきという声が参謀本部の大勢を占めた。


「宇垣陸相の考えは如何に?」


 慎重派は陸軍大臣宇垣一成大将の考えを質す。軍縮を進め、政府の信任厚い宇垣ならば抑えになるのではないかとの考えであった。


「私は……政府の一員としては不拡大方針であるが……陸軍大臣としては……荒木らの主張を支持したいと思う。張学良が奉天軍閥をまとめ上げることが出来れば早期解決するだろうが、反日的な態度を示すであろうことは容易に想像が出来る……であれば関東軍をして満州の守護すべき存在である陸軍としては採るべき対応は出兵であろうと考える」


 宇垣の言葉に慎重派に落胆の表情が広がる。


「私はこれから再度閣議に出て出兵を検討すべしと提案する」


 宇垣の再度の言葉で参謀本部の考えはまとまった。


「それでは、参謀本部は出兵を決定事項として作戦計画を立案、政府の承認を得た時点で行動開始出来る様に各軍へ連絡を行うべし」


 参謀総長鈴木荘六大将は正式に満州での軍事行動を命じたのである。

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