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この身は露と消えても……とある転生者たちの戦争準備《ノスタルジー》  作者: 有坂総一郎
皇紀2588年(1928年)

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真犯人

皇紀2588年(1928年) 6月18日 満州 遼寧省 奉天


 フランクフルター・ツァイトング東京支社からの情報は上海のリヒャルト・ゾルゲに渡った。


「アリサカの情報は間違いない精度の高いものだった。確かに奉山鉄路はスカスカの警備態勢だ。これなら予定通り張作霖を暗殺出来るな」


 ゾルゲは有坂総一郎から手に入れた資料を基に計画を立て奉天にすぐに飛び、情報通りであることを確認するとコミンテルンに張作霖抹殺を提案した。


「準備こそ出来ているが、まさか張作霖の特別列車が運行される日に許可が出るとは思わなかった……あと少し遅かったら間に合わなかった」


 ゾルゲはそう言いつつ自身が造り上げた計画書と実行現場の地図を確認する。


「そろそろ皇姑屯駅付近に通過する頃ですわね。彼らは上手くやるでしょうか?」


 アグネス・スメドレーは腕時計を見つつゾルゲに尋ねる。ゾルゲも同じように時刻を確認すると頷く。


「やれるかどうかはわからんさ。ただ、こうも無警戒だと罠にも思える。だが、賽は投げられたのだ。あとは結果に沿って次の策を講ずるだけさ」


「では、私は日本の陰謀だとアメリカの新聞社相手にレポートを送り日本と列強の間を裂く様に工作を行うわね」


 史実における彼女の精力的なレポートは同時代の支那駐在の記者の誰よりもずば抜けたものであり紛争当事者たちの声を伝えていた。同時に共産党指揮下の八路軍に従軍し、そこでの生活や様子を克明に記したものを発信していたことで読者の心を引き付けていた。


 この世界での彼女もまた同様に支那における精力的な取材活動と裏の顔であるコミンテルンのスパイとしての活動をやり遂げんとする表情がありありと浮かんでいる。


「私は東京支社と違った論調でドイツ世論を動かすとしよう」


 彼らはその後アジトを出て奉天市内のホテルに別々に宿泊し、他人のふりをしつつ日本側の陰謀であるという論調の記事を書き、それを報道各社へと送り付けて追跡調査と称して奉天に居座ったのである。


 だが、彼らはまだ気付いていなかった。彼らの姿を追って陰から彼らの行動を観察し続けている存在に……。


 史実同様にイギリス諜報部は彼らがコミンテルンのスパイであり、列強の不和の火種であり、危険な存在であるとリストアップしマークしていたのだ。


 そして、満州を舞台に東條英機大佐の猟犬として放たれていた甘粕正彦予備役大尉率いるA機関の密偵たちもまた彼らの行動を監視し妨害せずとも逐一報告していることを……。

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