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この身は露と消えても……とある転生者たちの戦争準備《ノスタルジー》  作者: 有坂総一郎
皇紀2588年(1928年)

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犯人は現場に戻る

皇紀2588年(1928年) 6月19日 満州 奉天


 犯人は現場に戻る。


 これはミステリーの基本である。いや、現実世界での事件の多くはそうであるからこそ、王道としてパターン化されているわけだ。


 大陸の乾いた風が吹きさす脱線転覆現場に現場検証と遺体捜索のために奉天軍閥の兵たちが総出で作業をしている。


 多くの死傷者は事件当日に運び出され市内の病院や瀋陽城に送られている。無論、死亡した張作霖もである。


 そこに欧米人風の男たちがカメラや手帳を持ち込み、そこかしこで写真を撮っている。


 焼け爛れた車両、脱線の影響で破損したレール、大爆発を起こして原型をとどめていない機関車、転覆しているが大きな損傷のない張が乗っていた車両、現場付近の風景など……。


「思ったよりも被害が少ないな」


「あぁ、どうやらしくじったようだ」


「まさか機関車を破壊するとは……やはり使えんな……」


 彼らは現地では馴染みのない言語、エスペラント語を用いて会話しているため奉天軍閥の者たちには全く理解出来なかった。


 彼らの腕には腕章があり、報道関係者であると示されている。


「軍用列車が何者かによって攻撃された……それだけしか情報が出てこない……肝心のチャンは生きているのか死んでいるのか、タナカはどうなんだ……」


「事前に情報が漏れていたのではあるまいな?」


 彼らがエスペラント語でヒソヒソと会話していたのが不審に思えたらしく奉天軍閥の兵士が近づいてくる。


「お前たち、報道のモノだから大目に見ているが、あまり怪しい行動をするとしょっ引くぞ……まぁ、なんだ、見逃すにしても……な?」


 兵士はそう言うと賄賂を渡すように促す。


「それでは……これで……」


「1、2、3……もう少し何とかならんか?」


「では、ミスター・チャンは無事か教えていただきたい」


 男はそう言うとさらに5枚ほどドル札を渡してニコリと笑う。


「閣下は奉天で指揮を取っておられる……お前たちも程々にしないと俺みたいに見逃してくれるとは限らんぞ……早々に立ち去れ」


 兵士はそう言うとまた歩哨に戻っていった。


「……無事だと……」


「だが、チャンらしき人物を狙撃したと報告はあったが……所詮は阿片中毒のゴミどもだな……使えん」


「引き上げるぞ……ここで得られる情報はもうなさそうだ」


 報道風の一団は奉天市内へと引き上げていった。

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