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この身は露と消えても……とある転生者たちの戦争準備《ノスタルジー》  作者: 有坂総一郎
皇紀2588年(1928年)

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続・我が闘争!

皇紀2588年(1928年) 4月18日 ドイツ=ワイマール共和国 ミュンヘン


 蒋介石との密約、タングステン・ショックの影響もありドイツ国防軍幹部が更迭されることとなり帝政復古派の勢力伸長が著しいドイツ国内であったが、一方でナチ党も勢力伸長に力を注いでいた。


 党首アドルフ・ヒトラーは以前の”我が闘争”に続いて”続・我が闘争”を刊行し、これを基にドイツ国民への行動指針として訴えかける戦術に出ていた。


 彼の目論見は一定の効果を示し、帝政復古派と行動を共に出来ない勢力や社会主義者たちにある程度支持を受けるようになった。


 だが、ここ数年来の経済復興とイギリスが対独融和に出ていることもありヴェルサイユ体制下ではあっても多少のゆとりが出来ていたドイツ国民には未だ彼らの政治的主張は完全には受け入れられてはいなかった。


 これは史実も同様であり、彼らナチ党が勢力を本格的に伸張させたのは29年から始まる大恐慌による閉塞感によるものである。だが、ナチ党が伸長したのと同じく社会・共産勢力も同様に伸長しているため、一人勝ちというものではない。この世界においても同じ様相を呈している。


 だが、決定的に違うのは史実においては突撃隊がまだこの時期には存在しており、ナチ党の武力組織として活動していたが、この世界には存在しない。対して、共産党勢力は赤色戦線戦士同盟という武力組織を有している。


 これは何もナチ党にとって都合が悪い事態というわけでもなかった。突撃隊は史実において色々と面倒事を引き起こす存在であり、史実において党勢拡大とともに下剋上の様相を呈していただけに、この問題児たちがいないことによってナチ党はそれだけ多くの支持を得ることが出来るということもまた意味しているからだ。


 しかし、武力組織がないということは政治闘争を行う上で相手の実力行使を阻止できないことも意味している。


 ヒトラーはこれに悩みを抱いていたのだ。


「ゲーリング君……君は私のために亡命中も色々と手助けをしてくれたが、此度も打開策を提示してはくれないだろうか」


 ヒトラーは亡命先から帰国したばかりのヘルマン・ゲーリングを呼び出していた。


 ゲーリングの立場は史実とは異なり、この時期にあってもヒトラーの代理人というものであり、史実の様な冷遇を受けてはいなかった。それもすべて有坂資金による工作の結果であるが、彼自身がモルヒネ中毒ではなく、生来の冴え渡る頭脳を発揮した結果でもある。


「武装親衛隊の設立と彼らによる実力行使が最善かと……親衛隊は党首個人に忠誠を誓うべきもの、それを束ねるのは忠誠熱きものが適任でしょう……ただし、レームやボルマンが如きものには与えてはなりません……彼らは組織を私物化しかねないきらいがあります……」


 ゲーリングは提案と同時に懸念を示す。


 史実においてエルンスト・レームは突撃隊によって国防軍と軋轢を生み粛清され、マルティン・ボルマンはルドルフ・ヘスの単独飛行後に党務の掌握、ヒトラー個人秘書と兼務することで大きな権力を手に入れていた。


「では、ヒムラーに任せるとしよう……アレは忠臣であるし、与えた職務には真面目だからな」


 史実通りに親衛隊はハインリッヒ・ヒムラーに任すと決めた様だ。


「完全に同意出来かねますが、差し当たっては彼が適任であるのは認めるしかありません」


 ゲーリングは不承不承に同意すると代理人としての役割を果たすべくヒトラーの執務室から退出した。

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