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この身は露と消えても……とある転生者たちの戦争準備《ノスタルジー》  作者: 有坂総一郎
皇紀2588年(1928年)

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寿発動機

皇紀2588年(1928年) 4月3日 支那山東省 青島郊外


 中島飛行機は発動機の開発方針に整備性の良さと徹底した製品・部品の出荷時品質管理を組み込む、これによって誰が整備しても一定の水準の性能を発揮する発動機を造ると打ち出したのだ。


 この効果は寿発動機の開発に大きく影響し、野心的過ぎる開発を抑制することで性能の劇的な向上よりも耐久性整備性を優先することで過酷な運用、環境にも耐えれるようにしていた。


 そのため、当初は800馬力を目指した寿発動機の原設計は見直しが加えられたのである。設計者や技術者からは不満が出たが、鉄道省におけるローレンエンジンの整備状況視察をしたことで馬力や回転数などの目見える数字を追い求め過ぎることでかえって性能低下や整備性悪化を招くと学んだ者たちが粘り強く開発陣に譲歩を求めたのである。


 これによって、当初よりも幾分落ち着いた性能となった。だが、格段に整備性の上がったことで、稼働率向上、故障率低下によるメリットは多く、比較として開発された当初設計案の試作発動機と改設計案の試作発動機を比べるとその差は歴然であった。


 整備性の良さは単純に作業効率にも大きく影響し、鋳造部材の多用による製造工数の少なさも大きく影響していた。また、分解のしやすさと組み立てのしやすさは、前線では起きやすい共食い整備も考慮に入れていたのである。


 これらの発想は彼らが学んだ結果と想像の産物であり、誰かの入れ知恵というものではなかった。


 しかし、鋳造部品の多用は彼らに多くの難問を突き付けるのであった。


 鋳造精度の低さによって歪みが出る、組み上げると噛み合わないという問題が発生し、まともに製品として組み立て運転させるということが出来なかったのだ。そして、鋳造の多用によって想定以上に重量がかさむという事態も発生した。だが、それらに対しても彼らは真面目に向き合うことで着実に解決していったのである。


 また、ブリストル・ジュピターエンジンを忠実に再現するための生産設備の改善と投資が行われ、本家の生産品と遜色ない水準に至り、その生産経験を確実に寿発動機の開発と生産に活かし始めたのだ。


 また、ライトR-1820サイクロン、プラット・アンド・ホイットニーR-1340ワスプなどを参考にし、その生産性の良さを取り入れることで、技術の取得と同時に独自性を示すことを目指した。これはブリストル・ジュピターよりも優秀性を示すに至ったのだ。


 協業しているブリストルはジュピターの改良を続けながらロイ・フェデン博士主導で新型エンジンの開発に取り組み、エンジン回転数を上げるためにストロークはより短くし、過給器を標準装備とした新エンジンは27年にマーキュリーとして完成させていたが、彼らはジュピターという確立した技術系譜から大きく離れることは出来ず、その性能は満足と言えるものではなかった。


 そのため、マーキュリーは完全にジュピターを置き換える存在となることはなく、その研究結果を活かしたペガサスの開発に移行している。だが、これも現状では開発が難航しているという。暫くの間、欧州の空にはジュピターを積んだ飛行機が舞う日々が続くようである。


 中島飛行機 寿発動機


 タイプ:空冷星型9気筒

 ボア×ストローク:146mm×160mm

 排気量:24.1L

 圧縮比:

 全長:1300mm

 直径:1350mm

 乾燥重量:435kg

 過給機:機械式1段1速

 燃料供給方式:キャブレター式

 離昇馬力 710馬力/2600回転

 公称馬力 680馬力/2400回転/高度3000m

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