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この身は露と消えても……とある転生者たちの戦争準備《ノスタルジー》  作者: 有坂総一郎
皇紀2588年(1928年)

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明日のために出来ること

皇紀2588年(1928年) 3月18日 帝都東京


「さて、概ね現状の問題点の洗い出しや今後の方針について出揃ったことだ。いずれにしても、年単位でのものばかりだが、以前に比べて帝国の国力が増していることで明らかに経済力が付いて来たことは間違いない」


 内務大臣後藤新平は満足そうに言う。


 有坂邸謀議の目的は帝国の国力の増強であり、その為の味方作りだ。閣僚や政治家、財界人が出入りするようになったことで東條英機大佐と有坂総一郎の担うべき役割は相対的に減り、参加諸氏の協力によって着実にその実績は出ている。


「市中に出回る通貨量も増えておることで景気は非常に良い。雇用環境も特に東北関係は目覚ましい改善がみられている。これは鉄道省の農道名目の産業道路建設と改軌工事によるインフラの改善によるものだ。だが、インフラ整備が一段落したら農閑期の出稼ぎがなくなることもあって景気後退が懸念される」


 鉄道大臣仙石貢は懸念を示す。


 仙石の言う通り、開発景気、国策による景気浮揚策である以上どこかでその効果は切れる。その時までに新たな雇用環境の育成をする必要があり、同時に東北の構造的な慢性的な農業依存体質を改革しないといけない。


「それは東北だけでない。工業化のみ推し進めるだけでは食糧自給にも影響が出る。それに対してどうするか、農業の近代化も進めないといかん。それには化学肥料、農業機械の導入推進も必須だ。そのためにも欧米の農業用トラクターの実用化を急ぐ必要があるだろう……これには多量の資本投下が必要だ」


「トラクターは場合によっては戦車製造に転用出来るであろうからな、補助金を出す形でなんとかならんだろうか?」


「陸軍省が主体になるのか? それとも商工省か? 農林省はカネがないぞ?」


 財界人たちは活発に意見を交わす。彼らは数年後の日本の姿へ目を向けている。だが、悲しいことにそれを実現するには大日本帝国には未だに資本が足りない。そのためにも彼らのなすべきことは多い。


「農耕機械については我が有坂が主体で事業します。陸軍の原さんが欧州駐在されると言うので、彼に資金提供して資料の確保や現物の調達を行っていただこうと考えております……原さんは装軌車両の第一人者ですから」


 有坂総一郎はそう言うと同時に東條英機大佐に視線を向ける。それに彼は頷く。


「では、今後の方針なども出揃ったことですし、商工省の岸さんを通じて東北の産業振興に商工省から何らかの施策を取ってもらう様に打診してみますので、今回の謀議は以上としたいと思います。ご苦労様でした」


 まだ話足りない感じの財界人たちは出来ることを分担するべく二次会と称して場所を移して研究と議論をするつもりなのだろう。赤坂の料亭に行くぞと話している。


 彼らもまた国士であった。

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