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この身は露と消えても……とある転生者たちの戦争準備《ノスタルジー》  作者: 有坂総一郎
皇紀2588年(1928年)

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鉄道官僚たちの野望

皇紀2588年(1928年) 3月18日 帝都東京


 有坂総一郎によって手が回されている部分は、表面上は国力増強、輸送力増強というものであるが、確実に戦争を意識したものであり、それが故にその時点で可能な過剰であるともいえる部分を前倒しでも採用している節が多くある。


 東條英機大佐ですら時にその事前準備が過剰に思えるところがあるのはそのためだ。だが、戦時を意識するとその準備はけして過剰でもなく、時期尚早でもない。


「鉄道省としても、この鉄道連絡船は北海道からの資源輸送に大きく寄与することは間違いないと思っております。平時においては資源よりも物資の輸送が主になるでしょうが、戦時においては敵潜水艦の脅威がある海上輸送よりも鉄道輸送の方が安全でありますし、海峡部のみの中継であるわけですからそれを防衛するのも比較的容易でしょう……実際に、物流の変化によって、海上輸送よりも輸送時間が短い鉄道を選ぶ荷主が増えていることもあって、飽和状態になるのは目に見えております」


 佐藤栄作は過剰に思えるそれが数年後には不足する見通しであることを資料を見せ示した。


「確かに一度の輸送は船舶の方がより多くそして安く運べます……しかし、内陸部への輸送や都市部への輸送を考えるとやはり鉄道輸送の方が利便性が高いということも確かであるのです……そして、今後、満州・北鮮からの資源が内地へ輸送されるようになれば、一段と輸送強化を図らねばなりません……鉄道省内部では亜細亜新幹線なる構想をぶち上げるものまで居る始末でして、これもとある御仁が煽った結果によるものです」


 佐藤は続けて言う。


 少なくとも鉄路は釜山を起点に京城、平壌、奉天、天津、北京、そして鄭州や済南を経て武漢、南京、上海へとつながっている。


 奉天と北京を結ぶ路線の途中には錦州のモリブデン、唐山の鉄と石炭がある。また、武漢と上海を結ぶ路線の途中にも大冶鉄山、銅陵銅山、馬鞍山鉄山があり、また淮南炭田もある。これらの資源を活かすも殺すも鉄道次第である。


「確かに鉄道省の一部には中支の鉄道をこの機に手に入れて、鉄道省傘下の現地鉄道を作ろうという機運もある。全く、誰が煽っているのやら……」


 佐藤の言葉に続けて鉄道大臣仙谷貢は総一郎に視線を向ける。


「さすがにそれは私は無関係ですよ……」


 総一郎は慌てて否定する。


「だが、連絡船の裏の用途から邪推した連中が商工省を巻き込んで結託しているという話だ。元を辿れば有坂君、君の周旋活動で火がついたようなものだと思うぞ」


「有坂さんはやり過ぎたのですよ……。全く、火消しをする側の立場になって頂きたい」


 仙石と佐藤は揃って苦言を呈する。


「ですが、彼らの言うことも一理あります。中支の資源地帯を抑えることが出来れば、帝国が必要とする資源が相当数確保出来るのは確かです……商工省の連中が積極的に周旋しているのはそれもあるからでしょう……彼ら特に銅資源の確保に頭を悩ましていましたからね」

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