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この身は露と消えても……とある転生者たちの戦争準備《ノスタルジー》  作者: 有坂総一郎
皇紀2588年(1928年)

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八八式中戦車

皇紀2588年(1928年) 2月18日 帝都東京


「トロツキーは予定通り失脚してシベリア送りか……」


 東條英機は陸軍の諜報部門と満鉄調査部から上がってきた資料を見て呟く。


「これでスターリンの独裁はほぼ完成しましたな……あとは大粛清がいつ始まるか……永田中佐の和平会議もどうなるかわかりませんね」


「この私にも最近、転勤の噂があってな……歩兵第一連隊を指揮せよという話も聞くのだ……どうも陸軍省から追い出したがっている勢力があるようでな」


 東條の口から陸軍省からの転勤を示唆され、対談していた有坂総一郎は驚く。


「永田中佐ですか? それとも皇道派?」


 総一郎は心当たりを聞く。


 本来、史実通りであれば永田鉄山の後継として動員課長に就任するべき時期だが、永田は動員課長の席を不動のものとし、動員準備を進めている。よって、空席となる可能性は低く、ここに転籍することはないと考えてはいた。


 しかし、特に落ち度もなかった東條に兵を率いるという役目が突然降って湧いて来たのだ。


「うぅむ……確かに連中には睨まれているのは間違いないのだがな……それとは別に軍官僚でずっと来ているからそろそろ兵を率いさせてみようという話でもあるのだ。近歩3以来だからもう10年は離れておるしな……」


「では、左遷というようなものでもないと……」


「まぁ、そうだな……前世でも来年に第一連隊を率いていたわけだからな……」


 東條は煮え切らない感じである。


 ここ数年、彼は陰日向に軍官僚としての地位や役割を十全に活用して各方面に人脈を広げ、政財界、技術者、官僚と付き合いを深めていた。


 それゆえに今ここでその影響力を行使できる立場から離れ、兵営に赴くというのは少しばかり考えるところがあるようだ。


「仮に第一連隊に赴任したとして、前世同様に将校全員の身上調書を取り寄せ、容貌・経歴・家庭環境などを暗記し、それから着任するおつもりですか?」


「無論だ。私は前世で行ったことを今度も行うし、彼ら兵たちがあっての我が帝国陸軍だ。それに陛下から預かっている兵だぞ? それを大事にせんなどあってはならんことだ」


 東條は真面目にそう言い切る。史実における「人情連隊長」というのは伊達でも酔狂でもなく、彼の信念であり、当然の行いなのであろう。


「内務班の新兵いじめを知らん高級将校や連隊長がおるなど本来あってはならんことだ。そして、帝都を預かる第一連隊で左様な真似させるわけにはいかん。兵のことを知らぬものが兵を指揮するなど言語道断であろう」


「やはり、東條さんは東條さんなのですね……転生しても一貫していますねぇ」


「曲がったことが許せんだけだ」


 東條は何を言っているのか、という表情そう言う。


「それで、東條さんは赴任なさるのですか?」


「辞令が出れば行かざるを得まい。まぁ、どのみち帝都の中だからな、今まで通りに会合を持てるだろう……ただ、中央における影響力は減ずるだろうが……あぁ、あと、原君が英国駐在になるそうだ。彼にはこの際だから戦車や装甲車両の情報収集と研究を行ってくるように密命している」


「原さんがですか……これは史実通りですね……」


「これからはさらに前世と異なる部分が増えてくるだろう……この私もどうなるかわからんからな」


 原乙未生は史実通りにイギリス駐在に向かう。彼が欧州駐在によって持ち帰る多くの知見は今後の戦車開発に大きく影響を与えることは間違いなかった。


「原君が関わっていた例の戦車だが、中島の発動機を載せたら馬力があがったらしく用兵側の要求を満たして量産が指示された。前世だと発動機性能のせいで八九式中戦車(イ号)を待たねばならんかったが、それなりに使える戦車が用意出来そうだ」


 彼が設計に参加した試製一号戦車だが、史実では陸軍の要求水準に達していなかったが、中島製の空冷エンジンの搭載によって馬力が向上し、陸軍の要求を満たしたことで、八八式中戦車として仮制式となったことで三菱重工業が主発注企業として量産を始めたという。


「ローレンエンジン様様ですな」

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