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この身は露と消えても……とある転生者たちの戦争準備《ノスタルジー》  作者: 有坂総一郎
皇紀2588年(1928年)

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城ケ島3人衆

皇紀2588年(1928年) 2月15日 神奈川県 城ケ島


 アンテナ林立する城ケ島要塞だったが、いつの間にかアンテナが撤去され、真新しいアンテナが一つだけ設置されていた。いろいろな形状のアンテナが林立していたのだが、新しく設置されたアンテナは今までのモノと違う背高で奥行きがない虫かごの様な形状であった。


 そして、その虫かご状アンテナは大きな箱型の部屋がすぐ後ろに設置され、部屋ごとぐるぐると回転しているのである。


 また、その土台には鉄筋コンクリートと思われる巨大な構造物であり、要塞の中でも突出していた。また、近くには発電機が置かれているらしく轟音を立てている。


「私が以前訪れてから随分と島の様子が変わりましたね……」


 白衣を着た男は隣にいる同じく白衣を着た男に言う。


「はっはっは。そりゃあ、そうだろう、君の発明があって飛躍的に出来ることが増えたのだからね、おかげで有坂コンツェルンが研究費用を増額してくれたんだ。しかし、岡部君、君の発明は素晴らしいものだよ。うん。誇り給え」


 相手の背中を上機嫌に叩くのは八木秀次。叩かれているのは岡部金治郎である。


「マグネトロンによって発生するマイクロ波は電波技術には大いに貢献することは間違いない。いや、私は良い弟子を育てたと思うよ、これさえあればより高性能な電波機器を作ることが出来る」


 八木は目をキラキラさせながら将来展望を語る。岡部は恩師が評価するほどの発明が出来たことを素直に喜んではいたが、同時にこの技術の公開を止められたことに不満があった。


 岡部は実用的なマイクロ波源とする分割陽極マグネトロンを発明し、その功績は大きいものであったが、八木は有坂総一郎や東條英機らにマグネトロンによる性能向上の可能性を伝えた際に公開を止めるように説得せよと依頼されていたのだ。


 岡部の試作品を組み込んだことで飛躍的に性能向上を果たしたアンテナによって効果が確認されると八木は帝都にいる総一郎と東條へ連絡を取り、すぐに岡部を拘束させたのである。


「しかし、先生……これは世界的に大きな発明であって、これは今後大きく発展を見るものです。それを発表するな、公開するなというのは……」


「いいか、君、このアンテナも軍機なのだよ。そして、その軍機であるアンテナの性能を向上させるのが君のマグネトロンだ。そんなものが列強に知られたらどうなる?」


 八木は岡部に向かってそう言ったが、その答えを返したのは別人だった。


「このアンテナは電波通信に用いることも出来るが、それとは別の使い方が出来る。そして、それが故に我々はここに監禁され、軍の望む兵器開発をさせられておるのだよ……。そして、岡部君のマグネトロンは我々が想定した以上の性能を引き出した……つまり、それは東條大佐や有坂氏が考えている兵器に大きく寄与するということだ……その可能性がある以上、この技術を公開することは出来ないということだ」


 宇田新太郎である。


 宇田の言葉によって岡部は自分が拘束された真の意味を理解したのである。そして、彼が今後、担うべき役割を自覚させられたのである。


「つまり……私も……ここで研究をさせられると?」


「まぁ、平たく言えばそうだね。ただ、資金に苦労することはないんじゃないかな……成果を出せば」


 宇田は岡部の肩を叩いて励ますが、それは岡部にとっては死刑宣告の様なものだった。

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