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この身は露と消えても……とある転生者たちの戦争準備《ノスタルジー》  作者: 有坂総一郎
皇紀2588年(1928年)

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襲撃艦

皇紀2588年(1928年) 1月8日 ドイツ=ワイマール共和国 キール


 ドイツ帝国海軍キール工廠の流れを汲むドイチェヴェルケの造船所でとある軍艦の起工式がこの日行われた。史実にはない軍艦の建造がドイツ海軍において進行したのは理由がある。


 本来、ドイツ海軍はブラウンシュヴァイク級前弩級戦艦の代艦を欲しており、これに対して装甲艦Aと仮称されるポケット戦艦(装甲艦)を計画していた。


 この装甲艦Aはいくつかの計画があり、史実では28cm三連装砲塔2基、12.7cm連装高角砲4基、舷側装甲100mm、航空機2機と射出機1機、28ノットというものが採用され、後に見直しと改設計が行われ、周知の28cm三連装2基、15cm単装8基、舷側装甲60~80mm、航空機2機と射出機1機、26ノットというものになった。


 だが、その際の検討案には基準排水量1万トン、38cm連装砲塔2基、15cm連装砲塔2基、8.8cm高角砲2門、舷側装甲200mm、22ノットという野心的なものもあった。


 無論、条約に違反する主砲を積んでいるため本命視は出来ないものではあった。だが、この時期から将来に向けてドイツ海軍は艦隊建設を本気で検討していたのは間違いない。


 そして、その彼らドイツ海軍の造船官を奮い立たせ、ドイツ海軍の高官たちに一歩踏み出させる決意をさせたのは他でもない大英帝国であったのだ。


 大英帝国がジュネーヴ海軍軍縮会議において巡洋艦枠の拡大と排水量制限の緩和を求め、同時にドレッドノート・クルーザーともインコンパラブル・ストロング・クルーザーともいわれる強力な巡洋艦計画をぶち上げたことが切っ掛けだったのだ。


 彼らがヴェルサイユ条約による規定に合わせて自重しつつも野心的な装甲艦A計画を進めようとしていた矢先に大英帝国が自ら先頭に立って軍縮条約破りを行ったのだから彼らは好機到来とほくそ笑んでいたのであった。


 そして、ジュネーヴ会議は迷走を続け、最終的には日英米が了解したことで実質的にワシントン軍縮条約は一部が無効化され、それを機に彼らの設計案は当初の自重したものではなく、野心的なものに昇華したのである。


 そもそも、装甲艦Aの設計案では用兵側から「政治によって造られた艦」で「弩級戦艦に砲力で、巡洋艦に速力で劣る艦」と酷評され、実際に防御力と速力に大きく欠陥を抱えていたためジュネーヴ会議による決定はこの問題を解決する好機であったのだ。


 彼らドイツ海軍は用兵側、艦政側がそろって議論を尽くし27年11月には装甲艦Aを襲撃艦Aと呼称変更した上で、建造計画を前倒しすることとしたのである。既成事実化を急いだということである。


「旧式化甚だしいブラウンシュヴァイク級前弩級戦艦の早期退役を行い、その代艦を早急に建造することとする。その性能や排水量は従来の常識的な数値であり、隣国を無暗に警戒させるようなものではない。あくまでも、条約の範囲内であり、なんら害意を持つものではない」


 建造開始と同時にドイツ政府は声明を行い、実際にブラウンシュヴァイク級前弩級戦艦をその場で退役回航させる命令を出していた。


 襲撃艦A計画は同時建造が行われることとなり、ドイチェヴェルケ、ノルトゼーヴェルケ、クルップ・ゲルマニア造船所、ブレーマー・フルカン造船所において同型艦4隻が起工されることとなったのだ。

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