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この身は露と消えても……とある転生者たちの戦争準備《ノスタルジー》  作者: 有坂総一郎
皇紀2588年(1928年)

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愛称付き列車の登場

皇紀2588年(1928年) 1月1日 大日本帝国


 前年末に仙台~東京~名古屋~大阪~下関をつなぐ大幹線の標準軌化が完成したが、ダイヤ改正は行わず従来通りの運行を続けていたのであるが、新年を迎えた元日に白紙ダイヤ改正が行われた。これにより改軌完了区間の大幅な時間短縮が実施された。


 また、同時に従来は列車番号のみだったが、特別急行列車と一部急行列車に愛称が付けられ、愛称付き列車には専用の機関車と客車が投入されることとなったのだ。


 列車番号1・2は特別急行「富士」と命名され、一等、二等客車が充当された。「富士」の編成は以下の通りである。


 機関車(C52形)、電源車、郵便荷物車、二等寝台車、二等寝台車、二等車、二等車、乗務員専用車、食堂車、一等車、一等車、一等寝台車、一等展望車


 まさに超豪華列車である。寝台は全室個室寝台であり、一等展望車には区分室が設けられている。また、乗務員専用車は乗務員用の寝台と準備室が用意されいることで質の高いサービスが可能となっている。


 この列車の導入には鉄道省が非常に難色を示したのであるが、鉄道省顧問であり、裏の鉄道大臣と言われている有坂総一郎によるゴリ押しによって実現したのである。


「我が帝国が列強に対して鉄道の分野でも劣らぬことを示し、帝国の、鉄道省の威信を示すにはこのような看板列車が最適である。列強各国の鉄道を凌駕するサーヴィスを示してこそ今後の弾丸列車にもつなげられるのだ!」


 この大義名分に反発する声はあったが、確かに視覚的に威信を示すことが出来るということは大きな意味があった。


 それだけでなく、非日常を日常の風景に溶け込ませることによって鉄道旅行という需要の喚起も出来、同時に数ヶ月ごとに日本各地を順番に旅行先として提案するディスカバージャパン、デスティネーションキャンペーンを先取りする形で実施可能としたのだ。そのための看板列車として「富士」は華美で贅沢である必要があったのだ。


 ディスカバージャパンという史実戦後国鉄によって実施された旅行キャンペーンは社会情勢の転換や国内外の他の企画とマッチしたことで大きく成功したのだが、総一郎は、これを鉄道省の政策として実施させることで国内鉄道網の充実と連携、そしてデスティネーションキャンペーンによる国内の需要喚起による輸送実績確保という可能性を指摘し、列島改造論とともに準備を進めていたのだ。


 また、列車番号3・4には特別急行「桜」とし、各等客車を充当している。「桜」の編成は以下の通りである。


 機関車(C52形)、電源車、荷物車、三等車、三等車、三等車、三等車、食堂車、二等車、二等車、二等車、一等展望車


 「富士」と違い、「桜」は利用実績を追求するために利用客が多いであろう二等車、三等車を中心とし、特別急行という格式を貶めないために一等展望車を最後尾に連結している。


 看板列車とは異なり、輸送実績が重要であるため座席数を確保しているのが「桜」である。元々は、三等車の連結数を増やして輸送力を強化するという案も出ていたが、これは鉄道大臣の仙石貢によって否定された。


「特別急行の特別たる所以を考えてみたまえ、その案ならば急行や速達急行などを名乗れば良いではないか、特別急行であるのだから一等展望車もしくは一等車を連結すべき」


 仙石の言葉は尤もであるとして三等客車のみで構成される速達列車は別途仕立てることとなった。


 列車番号5・6・7・8・9・10には速達型の急行列車が設定された。編成は二等・三等車で構成されるもので特に愛称は設定されなかった。


 列車番号11・12には「燕」が設定され、これには各等客車が充当された。「燕」の編成は以下の通り。


機関車(C52形)、水槽車、電源車、荷物車、三等車、三等車、三等車、食堂車、二等車、二等車、二等車、一等車、一等展望車


 「桜」に比べると三等車を減車し、代わりに一等車を増車している。「燕」は「桜」と違い、停車駅を極限まで減らしたことで速達性を求めていることで性格の違いが示されている。


 東京~神戸を結ぶが、横浜、静岡、名古屋、京都、大阪の5駅のみ停車するのみでそれ以外は徹底して時間短縮のために停車をしないようにしている。


 列車番号13・14には「鴎」が設定され、「燕」同様の編成をしているが、速達性を求めていないため水槽車を外し、また停車駅が増やされている。


 列車番号15・16は「彗星」が設定され、二等・三等寝台車が充当されている。「彗星」の編成は以下の通り。


 機関車(C52形)、電源車、郵便荷物車、三等車、三等車、三等寝台車、三等寝台車、三等寝台車、食堂車、二等車、二等車、二等寝台車、二等寝台車


 「彗星」は東京~広島を結ぶものだ。メインの客層は東京~大阪の乗客だが、海軍関係者のそれも考慮されている。三等寝台車は開放寝台であるが、二等寝台車は個室寝台車となっている。


 列車番号17・18には「銀河」が設定され、一等・二等寝台車のみで構成されている。「銀河」の編成は以下の通りである。


 機関車(C52形)、電源車、荷物車、二等寝台車、二等寝台車、二等寝台車、二等寝台車、乗務員専用車、食堂車、一等寝台車、一等寝台車、一等寝台車、一等展望寝台車


 この列車のイメージは「富士」と対になる部分がある。座席車と寝台車が供えられた長距離列車の「富士」に対して、「銀河」は文字通り動くホテルである。寝台車は完全個室となっている。現代で言うところの「カシオペア」などに相当すると言っても良いだろう。


 これらの列車が東海道本線、山陽本線に就役し、鉄道省の新しい時代を象徴する看板列車として活躍するのはもう間もなくのことである。

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