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この身は露と消えても……とある転生者たちの戦争準備《ノスタルジー》  作者: 有坂総一郎
皇紀2582年(1922年)

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東條の苦悩

皇紀2582年(1922年)6月5日 帝都東京


 参謀本部においてシベリアへの増派と弾薬の量産という方向へ会議を主導してから1週間。


 待命中の陸軍少佐東條英機は自宅にて各種資料と自身の記憶、同時に有坂重工業の新装備の情報を照らし合わせていた。


――有坂重工業の自動小銃はまるで合衆国のM1ガーランドそのものだな……いや、私の記憶にある四式自動小銃の劣化コピーだな。ご丁寧に九九式実包まで用意しておる。それに機関短銃……これも一〇〇式機関短銃そのものだ。これは私以外にも同じく前世の体験、記憶を有する者がいるということだ……恐らくは社長の有坂総一郎とやらの仕業であろうが……よくもやってくれたものだ。


 東條は目を細めながら資料に目を通す。気になる点には赤鉛筆でさっと下線を引き、それとは別にメモを取っていく。


 彼が最初に問題としたものは異なる口径であり、同じ口径であっても異なる実包であった。


――前世では小銃は三八式と九九式が口径違いで混在、軽機関銃も重機関銃も口径もバラバラ、実包もバラバラとよくもこんな無秩序な状況に誰も疑問を感じなかったものだな……。


――それに対して有坂は明快に方向性を示している。7.7mmへの統一という方向性だ。技術本部にも重機関銃、軽機関銃の開発提案をしているが、すべて同じ実包による規格統一、量産性確保を目指していると提案書類には強調されている。


 史実においても、この世界でも、帝国陸軍は次期主力小銃の口径は7.7mmという方向で議論が進んでいる。恐らく、何もしなくても7.7mmと決定されるだろう。


――だが、7.7mmは現場からの報告では反動が強すぎるという……。


 現行の6.5mm三八式実包では中遠距離における対人・対馬攻撃には命中精度も良く優位を確保出来るが、中距離での車両等への対物射撃では威力不足が顕著である。また、土嚢や土壁などへの射撃では貫通出来ないことが支那事変では明らかになるのだ。


――だからと言って、障害物への射撃で威力が不足すると後々判明するにも関わらず6.5mmのままというわけにもいかない……。


 支那事変において中華民国軍はドイツ製やライセンス生産のGew88系統の小銃を採用し、7.92mmという大口径小銃弾を浴びせかけ、装甲車両すらも貫通される始末だった。


――地上部隊の対空射撃という面も今後は否が応でも直面するだろう……前世では全力射撃で対応していたが、あれとて6.5mmでは効果が薄い……。


 彼が思考の迷宮へ足を踏み込んだその時……。


「旦那様、失礼致します……お客様がお越しなのですが、如何致しましょう?」


 突然の来客に彼は何事かと考えたが会ってみることとした。


「応接間に御通ししてください」


 女中は一礼すると玄関へ向かっていった。彼も女中の後を追い、応接間へと向かった。

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