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この身は露と消えても……とある転生者たちの戦争準備《ノスタルジー》  作者: 有坂総一郎
皇紀2587年(1927年)

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東方会議<5>

皇紀2587年(1927年)6月28日 神奈川県 箱根


 前日の岸信介の宣言によって商工省は統制主義のそれを軌道修正することとなった。いや、正確に言えば、東條英機が前世の記憶を基に岸の本当の理想的国家像をサルベージさせたことで、東條-岸の間が近くなったというべきだろうか。


 この動きはその後に大きく影響することになる。東條の影響が及ぶ範囲が従来の内務省、陸軍省、憲兵隊、鉄道省、産業界だけでなく、岸の根城である商工省に広がったことは実質的に大日本帝国の行政を主導する官僚組織をほぼ掌握したも同然だからだ。


 だがそれが面白くない人物もいた。岸と盟約関係にあった永田鉄山である。彼からすると同じ統制派に属する存在であるにも関わらず、東條に花を持たされたことで日和ったからだ。


 無論、岸だけでなく商工省には他にも統制派シンパは数多く居る。何しろ、革新官僚の根城が商工省だからだ。彼らの多くは外資を利用することは好まれない。自国の産業を育成するため、統制による引き締めと保護は基本政策である。


 また、商工省は自分たちこそが日本の経済を運営しているという自負があるだけに自分たちが企画立案した通りの経済発展という計画経済的発想が蔓延っている。


――このままでは陸軍は明確に3つに分裂し、東條一派は財界や官僚を味方につけ専横を極めることになりかねん……なにより、東條らの思惑通りに事が進行しているのが証拠だ……。なんとしても陸軍を統制し、下克上的な風潮を改めねば……。


 永田の懸念は半ば当たっている。だが、半ばは外れていた。東條や有坂総一郎、平賀譲の様な転生者にとってこの世界は明らかに前世と異なる方向へ転がりだしていて、徐々に加速していることに苦慮している。


 そして、荒木貞夫、真崎甚三郎らに代表される皇道派は史実と異なる成立を見ている。そして彼らは史実の様な軽率な動きを見せてはいない。ただ、命令違反などの下克上的手段による実績を是認する空気を醸成しているのは史実にも近い部分がある。


――俺が出来ること……陸軍中央を味方につけるには……やはり実績が必要……であるならば……。


 永田の脳裏には一つのプランが浮かんでいた。


「私から一つ提案があります……。我が帝国陸軍の動員状況から考えますと、満州・支那情勢の緊迫で派兵をするとしても内地から3個師団程度は関東軍などに増派出来るとしても、それ以上になると内地の防衛と治安維持の面から非常に厳しいと申し上げるしかありません。」


 永田は会議二日目で主導権を握るための提案を行う。


「確かにその程度が限界だろうな」


 関東軍司令官、武藤信義はこれに同意する。


「で、永田よ、貴様は何を提案してくれるのだ? 限られた戦力での介入では戦力の逐次投入を招くだけだぞ」


「いえ、日ソ支の3者会談を設定し、それによって満州における緊張を緩和し、当面の問題を上海方面のみに限定するのです」


 永田はそう提案したが、その腹の内にあったのは恐るべき計画であった。

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