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この身は露と消えても……とある転生者たちの戦争準備《ノスタルジー》  作者: 有坂総一郎
皇紀2587年(1927年)

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東方会議<2>

皇紀2587年(1927年)6月27日 神奈川県 箱根


 史実における東方会議は田中義一総理大臣が主催し、幣原外交を是正することを目的とし、主に支那方面における権益保護と今後の国策方針を策定するために開催されたものである。


 そしてこの世界においても、支那方面における権益保護と国策策定が目的として開催された。だが、史実とは異なり幣原外交は既に排されており、日本と列強は協調して支那に介入している。これによって、会議の方向では、支那における新秩序確立が自然と主題となるのであった。


 会議が始まると現地情勢を把握している奉天総領事である吉田茂が真っ先に口を開き、緊迫する満州情勢に早期介入を要望したのである。


「今やソ連赤軍はハイラルに陣地を構築し、重砲の配置も進んでいる。これによってチチハル前面に主力を配置している張作霖の主力軍は手出しが出来ないでいる。問題は張作霖の軍が騎兵を中心とした戦力であり、広大な平原での会戦であるならば兎も角、縦深陣地の突破など不可能であろうということだ」


 吉田の言に関東軍司令官である武藤信義も同意する。


「赤軍はシベリア出兵での惨敗を学んだらしく、持ちうる限りの機関銃を配備しておると斥候からの報告が上がっている。我が関東軍に配備されておる機関銃の数を既に上回っているのは確実だ。これではシベリア出兵後に強化された支援火力といえど突破は困難であろう……やはりタンクの投入でもせねば難しかろうと参謀どもは頭を抱えておった」


「張作霖も火力の劣勢を理解出来ておるようでアメリカからの武器買い付けを行っているようだが、どうやら北京から軍を引いたことで北洋政府における影響力が相対的に低下している。また、急な徴発によって人心が乱れているためか天津などでは商家や企業への打ちこわしも頻発しているという……」


 参謀本部第二部長松井石根は補足する様に北支の状況を伝える。


 内地にいる参加者たちの認識以上に満州及び支那の情勢は悪化していることが伝わると衝撃が走った。彼らは内地で対岸の火事と侮っていたわけではなかったのではあるが、人心の荒廃、秩序の崩壊という凡そ国家が国家としての体を為していない状況というのは容易ならざる事態であることを如実に示していた。


 陸軍側は介入に否定的ではないにしても、非常に慎重であった。特に関東軍はシベリア出兵の終結以来、火力の充実を図り、同時に自動車化を進めていたがソ連赤軍の戦訓を活かした鉄壁の縦深陣地を攻略する自信はなかった。


 そもそも、関東軍に配置されている戦力は非常に少ない。2個師団(自動車化師団)と独立守備隊5個大隊が配置されているだけである。だが、そのため内地にある師団に比べれば明らかに装備の質は高い。近隣の朝鮮軍(朝鮮総督府領を管轄)の2個師団と2個要塞守備隊を含めても5個師団弱の戦力でしかない。


 そして、最大の問題は戦力そのものではなかった。


「我が関東軍は2個師団程度ではあるが、帝国陸軍でも最強と言える戦備を整えている。故に出撃して敵を討てと命ぜられたならば敵中突破して見せる。だが、打って出るにしても問題がある。それは兵の少なさではないのだ」


 武藤は表情を曇らせつつ参謀本部第一部長荒木貞夫を見る。


「問題は張軍閥に……張作霖そのものにある。アレこそが我が帝国の権益を侵害し、満鉄を破綻させかけた原因なのだ……関東州を空にした後に空き巣に入られかねん」

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