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この身は露と消えても……とある転生者たちの戦争準備《ノスタルジー》  作者: 有坂総一郎
皇紀2582年(1922年)

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ウスリースク市街地戦

皇紀2582年(1922年)4月28日 極東共和国 ウラジオストク近郊


 シベリア情勢は未だ危機的状況を脱してはいない。史実通り、極東共和国は傀儡として何の役にも立たず、それどころか実際には敵対勢力と化している。


 帝国陸軍はウラジオストク、ナホトカなど港湾都市とその周辺を保持するのが精一杯という情勢である。


 諸外国からは撤退を常に要求され続け、出兵の大義名分の白軍は事実上壊滅状態であり、尼港事件という悲劇もあり、国内からも撤退の声は日増しに上がっていた。


 だが、帝国政府としても、帝国陸軍としても、介入した以上は成果を出さねばならない……泥沼である自覚があっても、犠牲が増えようとも手を引くに引けないのである。


 まさにギャンブルで破滅していくアレみたいな状況なのだが、自覚していようが国家の威信と軍の面子にかけてそれを認めるわけにはいかない……。


 そんな状況下、帝国陸軍は浦塩派遣軍へ第8師団を交代戦力として派遣したのであった。


 国内からその派兵には懐疑的な主張が沸き起こったが、帝国政府は必要な措置であると押し通したのだ。


 この派遣される第8師団は正規の通常装備に加えて試製装備をも配備されており、事実上の実証試験を兼ねて送り出されたのだ。


 彼ら第8師団は到着後、シベリア鉄道に沿ってハバロフスク方面へ進出し、途中のウスリースクまで来たその時……。


「敵発見!」


 斥候兵の叫び声が木霊した。


「状況報告!」


「ウスリースク北方リミチェフカ村付近まで前進したところ、極東共和国軍及びパルチザンが村を襲撃していることを確認、また、鉄道沿いに共和国軍が進出しており、まもなく会敵する見込みであります」


 史実通りに極東共和国と赤軍は南下、ウラジオストク目指して行動していた。


「急ぎ、ウスリースクに進出、住民にウラジオストクへの避難を指示せよ!」


「はっ!」


 第8師団長小野寺中将は状況に焦りを感じた。


――思ったよりも敵の浸透が速い……これでは不味いではないか……。


 第8師団はウスリースクへ到着すると同時に避難民を列車に乗せすぐにウラジオストクへ走らせ、自分たちは駅を中心に展開した。


「市街地戦で対応するしかない。すぐにバリケードを用意しろ!その辺の家屋から使えるものを引っ張ってきて防御陣地とする!急げ!」


 第8師団幹部は駅近くのホテルに司令部を設置、周囲に幾重にもバリケードを築き敵の進出を待った。


「敵発見!まっすぐ司令部へ突っ込んできます!」


「いいか、無駄撃ちするな!引き付けてから撃て!」


 最前線のバリケードで怒号が飛び交った。


「敵、撃ってきました」


「まだだ、まだ撃つな……いまだ撃て!」


 試製自動小銃を手にした歩兵が次々に発砲を始める。彼らは内地で訓練して扱いは習熟していたため、無駄に連射をするようなことはしなかった。


「やはりボルトを起こすさずに次が撃てるのはいい」


「だが、もう1発しかないぞ……撃たないと交換出来ない」


「まぁ、待て、そこは長篠の三段撃ちでしのげばいいだけだ……突撃戦じゃないからな……」


 自動小銃の欠点は撃ち尽くさないといけない。三八式歩兵銃は途中でも必要に応じて弾を込めることが出来るが、それが自動小銃では出来ないのだ。


 そのため、場合によっては無駄撃ちをしてクリップを交換しないといけないのだ。


「来たぞ、敵の第二波!」


「二人一組で残弾を気にしつつ交互に撃て!」


「了解!」


 第8師団先行部隊は押し寄せる極東共和国軍とパルチザン相手に数時間の戦闘を繰り広げることとなる。


 共和国軍は波状攻撃を仕掛けてきたが、分厚い、そして途切れることのない第8師団の射撃にバリケードを抜くことが出来なかった。


 逆に機関短銃を装備した分遣隊の奇襲攻撃を受け総崩れする部隊も出たのである。


 ウスリースク市街地戦は結果的には第8師団の勝利で終わったが、元々用意していた弾薬をほぼ使い切ってしまい、結局ウラジオストクへ後退、補給を受けることとなった……。


 彼らが考えていた以上に新装備は弾薬消費が加速していたのである。


 しかし、それに比例するかのように共和国軍とパルチザンに強いた出血は多大なものであり、共和国軍の進出は頓挫、ウスリースク周辺の共和国軍はハバロフスクまで撤退したのであった。

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