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この身は露と消えても……とある転生者たちの戦争準備《ノスタルジー》  作者: 有坂総一郎
皇紀2587年(1927年)

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政友本党

皇紀2587年(1927年)4月17日 帝都東京


 総理官邸において閣議が行われた晩のこと……元赤坂にある料亭で集う男たちがいた。


「総裁、これで内閣も身動き取れず総辞職と相成りましょう。枢密院に働きかけをした甲斐があったというものです」


 にやけた表情で酌をする男は上機嫌にそう言った。


「鳩山君、おら、ああいうやり方はあまり好きじゃないのだがな……だが、まぁ、これで政権が転がり込んでくるのであれば良しとしよう」


 この場にいる者たち……上座に座る和装の男は政友本党総裁の田中義一、彼の右に座るのが幹事長の鳩山一郎、田中の左に座るのが総務委員長の鈴木喜三郎。以下、居並ぶ政友本党の幹部連。彼らは政権交代の好機とばかりに議会外工作を進め、枢密院、貴族院にも働きかけを行い若槻内閣倒閣へと暗躍していたのだ。


 彼らは立憲政友会と憲政会という与党勢力に原内閣以後煮え湯を飲まされ続けてきた。前回の総選挙において野党第一党の地位を確保していたが、安定多数を確保する与党二党に迫る力はなく、東條-有坂枢軸の立案した政策は予算という問題があっても着実に実行されてきたのである。


 それだけに今回の政権交代の可能性に大きな期待をしていた。議会外工作や党首間協定を理由とする揺さぶりによって若槻内閣は大きく動揺していたのだ。


「大命は田中総裁に降下するでしょうが、少数与党にならざるを得ません。この機会に政友会に働きかけをして切り崩すべきかと……鳩山君にはまた一働きしてもらうことになりましょう」


 鈴木は義弟である鳩山に視線を向ける。


「お任せください。今の支那情勢は追い風になるでしょう。なに、欧米の支那における振る舞いに不満を持つ者がおりますからな。彼らが今の若槻内閣の欧米追従に不満を口にすれば燃え上がることでしょう」


「大アジア主義者か? それとも……」


「ええ、幣原男爵です。彼は欧米に失望している今、引き込んで政権批判をさせ、矢面に立たせれば良いのですよ。彼らがあとは勝手にお膳立てをしてくれますから、そこで我らが動けば……」


「なるほど……引っ掻き回すだけ引っ掻き回せて我らが折衷案を提示するというのだな? それであれば政友会の連中はこちらに靡くだろう……いや、場合によっては古巣の憲政会の連中さえも幣原男爵を抑えきれない若槻内閣を見限るか……」


 鳩山の毒を以て毒を制す的な方針に理解を示す田中だった。


「あとは各省の官僚に政権獲得後の抜擢と政界転身をちらつかせて味方に付かせるという地道な多数派工作と各省の掌握も図らねばならん」


 鈴木は鳩山の謀略に期待しつつも投機的なそれに頼らない従来の票田開拓も忘れてはいなかった。


 鈴木にしてみれば義弟である鳩山のことは信用しているが、鉄道政策、統帥権問題で国民的な人気を失っている彼が失地回復とばかりに前のめりになっているのが心配であった。

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