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この身は露と消えても……とある転生者たちの戦争準備《ノスタルジー》  作者: 有坂総一郎
皇紀2582年(1922年)

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ラパッロ条約

皇紀2582年(1922年)4月18日 ドイツ=ワイマール共和国 ベルリン


 駐独武官東條英機は帰国命令を受け、後任の山下奉文に引継ぎを行っていた。東條は山下にドイツの動きに逐一目を光らせるようにと厳命した。


「東條さん、そうは言うが、ドイツもこれだけ経済的に疲弊しているのだ、そうそう軽々しい動きなど出来ないでしょう」


「いや、必ずドイツは動く。当然、そうなればドイツの兵器開発の速度は加速する。それを見逃すな」


 この日、史実通りに列強各国はイタリアのジェノバに集まり金本位制への復帰を検討する会議を行っていた。


 ジェノバ会議と呼ばれるこの会議は、国境再編と樹立された新国家によって複雑となった中央、東ヨーロッパの経済復興と再建する戦略をまとめ、資本主義の欧州と共産主義のロシアの間で経済に関する調整を行うことが目的である。


 そして、参加国の中で史実通り不穏な動きをする国家が二つあったのだ。


 一方は敗戦国であり、厳しい軍備制限措置が取られているドイツ=ワイマール共和国、もう一方は列強全てだけでなく、敗戦国であるドイツまでもを敵に回し世界的に孤立してしまったソビエト=ロシアである。


 この二つの国はいずれとも経済、軍事で明らかに劣勢となっている状況であり、国際秩序であるヴェルサイユ体制では除外されたある意味では見捨てられた国家同士なのである。


 東條と山下の引継ぎが一段落着いた頃合いで休憩をと考え応接セットへ行き、ラジオを付けた時であった。


「我がドイツは、ブレスト=リトフスク条約における請求権を放棄することを宣言する」


「我がソビエト=ロシアは欧州大戦における請求権を放棄する」


「「ここに我らは相互親善の精神により両国の経済的必要を解決するため協力する」」


 ラパッロ条約……表向きは相互の請求権放棄による国交正常化を謳った条約であるが、その実は大きく違った。


――ドイツとソ連はやはり水面下で手を握ったか……ならば日独ソの三国関係は史実通りの進展となりそうだ……。


――ドイツはこの時から軍事技術の開発をソ連領内で行うようになる……。当然、その技術はソ連に流出する。同じようにトルコや支那もドイツにとっては実験場となるわけだが……。


 ラジオはそのまま他のニュースを流した後、軽快な音楽に切り替わった。


「……東條さん、これは……」


「言ったとおりになったな……私は帰国するが、今後はドイツのこういう動きを察知したらすぐに本国へ知らせるように……対応を誤ると……」


「シベリアでの情勢に影響すると……?」


「いや、それ以上のことになりかねない……ロシアも海を越えてまでは攻めて来れまいが、ドイツがロシアとだけ秘密協定を結ぶとは考えにくい……」


 東條の言葉に山下は戸惑いを見せるが、すぐに復唱した。


「今後、ドイツの不審な動き、軍需メーカーの不自然な動きがないか調査を行い、都度報告致します」


「それでよい。これからが本番だ。いつまでも貴様が駐独武官であるわけではないが、ドイツの動きには目を光らせておかねば足元を掬われると心せよ」


「はっ!」


 その後、東條は引継ぎ書類作成に戻り、山下はラパッロ条約に関しての裏を取るため行動を開始したのであった。

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