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この身は露と消えても……とある転生者たちの戦争準備《ノスタルジー》  作者: 有坂総一郎
皇紀2587年(1927年)

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張作霖による南征計画

皇紀2587年(1927年)3月15日 支那 天津


 広州政府の北伐軍は南京国民党政府の自滅によって華中に勢力を伸ばすことに成功した。もっとも、蒋介石に服属した華中各省の要人たちも心の底から臣従するつもりはなく、あくまで自己保身と新政権における立場強化を狙ったものでしかない。


 このため、各省に根を張る中小の軍閥などは北伐軍に加わることを良しとせず、対等の立場であると主張し、北伐軍と一触即発の者も一定数いたのであるが、朱徳率いる征討部隊によって順次討伐され、北伐軍に組み込まれていったのである。


 朱は2個師団相当の戦力を与えられると陽動作戦による誘き出しを行い、ノコノコと誘い出された軍閥勢力を包囲殲滅することで名を挙げたが、それ以後、軍閥勢力は警戒を強め陽動に乗ることなく籠城したり合従連衡による抵抗を示すが、浸透戦術によってこれを寸断し、各個撃破するという戦果を挙げ、1ケ月の間に華中を抑えたのである。


 これによって3月中旬までには華中において北伐軍の軍事的な優勢が確定したが、それは新たな動乱の序章に過ぎなかったのである。


 そう、蒋が国民党の実質的指導者の地位を確立した同時期、北京にある北洋政府を主導する一人、張作霖は天津にて米国企業と接触、欧州大戦後の余剰兵器を確保していたタングステンと交換することより手に入れていたのだ。


 張は元々日本側とのつながりがあり、彼の北支・満州における軍事的優勢は日本の後ろ盾があってのことであった。だが、彼と友誼を結ぶ田中義一退役大将は政友本党総裁であるが、野党であり日本側からの支援が期待出来なくなっていたのである。


 また、同時に張はシベリア出兵においてシベリア共和国・パルチザン勢力に加担していたこともあり、それが日本側に薄々であるが気付かれていると悟った時点で対日関係に距離を置くようになっていたのだ。


 そして、彼にとって止めとなったのは北鮮開発だった。これによって満州や北支に流れるべき国際資本が日本に流れることとなったことで軍事優先経済だった満州経済に明らかに暗い影を落としていたのだ。


 政情不安・治安不安のある満州や北支よりも、政情は安定しカネ払いの良さが保証される日本に資本が流れるのは当然である。これによって満州経済は一気に傾いたのだ。


 そうなると張にとって非常に都合が悪い。元々、張を含む軍閥というものはヤクザと同様であり、所謂みかじめ料やシノギによって成り立っている。


 いや、ヤクザの方が経済的にみると健全だろう。彼らは副業によって本業以上の利益を出していることもしばしばある。だが、軍閥は巻き上げることでしか成り立たない。いるのは軍人モドキであり、彼らは政治家でも官僚でもない。つまり、経済運営というものが出来ない存在なのだ。


 そういった存在である軍閥が存続するためには不景気であっては困るのである。そうなると不足するアガリを何かで補填するしかない。つまり、早い話、略奪である。


 だが、彼らもまた立場としては為政者である以上、自勢力下で略奪など大っぴらには出来ない。結果、仲間割れと他者を出し抜き、自らの下に置く必要があるわけだ。


 そうした理由から張は短期的にカネになることが明白であるタングステンを狙い、北伐軍の討伐を目論んでいたのであった。

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