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この身は露と消えても……とある転生者たちの戦争準備《ノスタルジー》  作者: 有坂総一郎
皇紀2587年(1927年)

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史実よりも深刻な状況を作り出したのは彼だった

皇紀2587年(1927年)1月29日


 有坂総一郎は鮎川義介の経営する戸畑鋳物を介して北九州地域にある中小の鉄工企業をまとめさせ、筑豊製缶というドラム缶専業の企業を設立させることに成功したのであった。


 総一郎が何故北九州に筑豊製缶を設立させたのか……それは出光商会との関係があったからだ。


 出光商会はこの世界では史実よりも遥かに規模を拡大しており有坂重工業においてタンカー出光丸を建造し、これを引き渡されてからは主にアメリカ・カリフォルニアからガソリンを輸入し、自社の流通網で売り捌くところまで成長していた。


 だが、新門司に設置した自社備蓄施設においてガソリンや機械油を一斗缶に詰め替えてトラックに積み込み販売所に運ぶという作業があり、効率の面で非常に悪い状態であった。


 門司、小倉などの北九州諸都市や福岡は島根県安来に設立されたフォード・ジャパン製造のタクシーが急速に普及し、市内の移動に確実に浸透し始めていたのだ。こうした限られた用途ではあるが、モータリゼーションが始まったことでガソリンの需要は日増しに増えていた。


 その需要を満たすべく出光佐三は販売所の数を増やすと同時に供給体制を見直すのだが、その効果は限られたものであり、そもそもタンクローリーなどという事業用車を有していないこともあり、トラックに積み込んだ一斗缶の山を運び、空の一斗缶を再び新門司に運び込み詰め替えるという状況だったのだ。


 当初はそれでも問題はなかったが、急成長している需要、そして本州で進行する列島改造によるトラックの不足という状況によって出光は確実に追い込まれていたのだ。


 無論、出光商会にもドラム缶がないわけではない。アメリカからの石油製品輸入時に合わせて輸入しているが、そもそもの絶対数が不足している状況である。


 この状況に業を煮やした彼は総一郎宛に石油業界の現状の問題点をまとめたレポートを送っていたのだ。


 無論、彼も人任せにしているだけでなく、自らも打開策を講じてはいるが、急速なモータリゼーションと列島改造という特需が彼の行動よりも急速に進展していることで後手後手になったのだ。特に鹿児島本線(門司~鳥栖)、長崎本線、筑豊本線の改軌工事が始まった26年秋から事態の悪化は著しかったのだ。


 出光商会の親会社筋にあたる日本石油ですら需要を満たすには無力であったと言える。いや、正確には日本石油は九州どころではなかったのだ。本州の需要を満たすことに全力投球していてそんな余裕がなかった。


 同様に他の石油会社も自社勢力圏の需要を満たすためトラックの奪い合い、ドラム缶、一斗缶の奪い合いを繰り広げる始末だったのだ。


 明らかに総一郎の想定を超えた需要のインフレーションが発生していたのである。


 この事態に彼が気付くのはあまりに遅すぎたのだ。いや、気付いていても手を下すことは出来なかっただろう。なにしろ、彼は欧州外遊で半年近くも国内にいなかったからだ。


 結果、ドラム缶の自給が出来ていないこと、トラック不足が深刻であること、フォード・ジャパンの操業によるモータリゼーション進展がまとめて襲ってきたのである。


 総一郎はこの状況に際して年始から全力で取り組むこととなり、結果的に歴史改変の本筋から離れざるを得なくなったのだ。

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