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この身は露と消えても……とある転生者たちの戦争準備《ノスタルジー》  作者: 有坂総一郎
皇紀2586年(1926年)

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もう一方の当事者

皇紀2586年(1926年)9月30日 広州


 大英帝国東洋艦隊による海上封鎖によって蒋介石の広州政府は苦しい立場にあった。東洋艦隊の臨検によってタングステンを積んだ貨物船だけでなく他の貨物を積んだ船も抑留または拿捕されるに至り、じわじわと物資不足による支配地域の住民感情の悪化が顕著になってきていた。


 食料品の自給自足は出来るといえども嗜好品や国内生産できない生活必需品が手に入らないことに対する不満は大きく、特に都市居住者における不満は農村地帯の比ではなかった。


 この状況に蒋は政策の転換を余儀なくされつつあった。


「校長……失礼、司令……このままでは先行きがあまりにも悪すぎるかと……ドイツも密約は継続するが列強と事を構えるつもりはないと通告している現状、我らに味方する者はおりません」


 投降した後、周恩来は蒋の側近として仕えている。彼は外交関係で蒋を支えていることもあり、特に昨今の対外関係の急速な悪化に頭を痛めていた。


「まさか大英帝国が艦隊を出して妨害するとまでは思わなかった。精々が抗議や撤回要求程度だと考えていたが……ドイツも友好価格で最初は付き合ってくれたが拿捕されてからは連中に同調しおったしな……存外ドイツも当てにならん」


 元々はドイツ商人を経由して提携した合作だったが、広州政府が想定していたよりも上手くいっていない。旧権益という絵に描いた餅をちらつかせることで引っ張り込んだが、彼らはこちらより一枚上手であり、実質的には広州政府の眼が届く地域は兎も角、それ以外の地域、特に山東半島はドイツの再進出によって回復した権益が侵害され、また一部はドイツ資本の元に還っている始末だ。


「組むべき相手を我々は間違えたのだろうか……」


 蒋は頭を抱えながらつぶやく。


「いえ、現在のところ相手は間違えておりません。ですが、今後もドイツと組むべきかと言われたらまた別ですが……」


 周は壁に張り出されている大陸と周辺地域が描かれた地図を見る。


「近くて遠い国が我々のすぐ目の前にはあります……その国を今後は頼ることになるでしょう。かの国であれば、目の前の敵と兎角小うるさい猟犬を黙らせる力くらいはあるでしょう……ですが、かの国はドイツ以上に警戒しなければなりません……利用されたら最後、我々は再び植民地化される運命でしょう」


 蒋は周の視線を追って地図を見る。


「フィリピン……アメリカか……確かにあの国には恐ろしいところがある……余程用心して掛からぬとこちらが食われるな……」


「ええ、ですが、今はタングステンの輸出制限の解除を仄めかして列強の動きを見ませんと……彼らのことです、広州に上陸くらいは平気でやりかねないと……」


「であるな……」

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