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この身は露と消えても……とある転生者たちの戦争準備《ノスタルジー》  作者: 有坂総一郎
皇紀2586年(1926年)

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船中省庁再編案

皇紀2586年(1926年)8月16日 スエズ運河


 8月3日にロンドンを出港した日本郵船の筥崎丸はいよいよスエズ運河に差し掛かっていた。


 有坂夫妻が乗船している筥崎丸のスケジュールは以下の通りである。


 8月3日、ロンドン出港

 8月7日、ジブラルタル寄港・出港

 8月9日、マルセイユ寄港、10日出港

 8月12日、ナポリ寄港・出港

 8月16日、ポートサイド寄港

 8月17日、スエズ出港

 8月28日、コロンボ寄港・出港

 9月2日、シンガポール寄港、3日出港

 9月8日、香港寄港、9日出港

 9月12日、上海寄港、13日出港

 9月16日、神戸寄港、19日出港

 9月20日、横浜寄港


 有坂夫妻は途中、神戸で下船し特別急行に乗車して帝都へ帰京する予定である。


 約50日間ある航海の間、総一郎は結奈とともに将来的な省庁再編と同時に新帝国憲法の青写真を描くことにしたのだ。


 大日本帝国が大規模な省庁再編を行ったのは戦時中の東條内閣が最大規模であった。この時は既存の重複、関係する行政を再編するにあたっていくつかの省は合併、中には解体分離した上で他省と合併ということもあった。


 だが、その結果、あまりにも巨大な省が出来上がり、結果として統合効果が出るどころか非効率になるということも発生していたのだ。それが運輸通信省である。


 運輸通信省は鉄道省、逓信省を母体とするもので、いわば、現代で言うところのJR、NTT、日本郵政の現業3大グループをまとめて、その上で国土交通省という行政を包括したものであり、80万人にも及ぶ人員を抱えているモノになった。結果、終戦前に外局の通信院を分離させ運輸省に改組されるという始末である。


 戦時における行政のスリム化、効率化を求めたにも拘らず理想とは違う結果を招いたそれはやはり再編を急ぎ過ぎたが故の失敗だっただろう。


 また、産業を扱っている農林省、商工省、そして戦時生産を指揮する軍需省の管轄などに関しても現代の省庁を基本として検討を進めていたのである。


 そして、東條内閣においても検討されながら流産となった国防省の設置に関しては夫婦揃って改革の本丸と位置づけ、なんとしてでも通過させる考えであった。


 省再編案

 総理府 外務省 大蔵省 内務省 法務省 国防総省

 農林水産省 通商産業省 逓信省 鉄道省 厚生省

 ※大東亜省


 大東亜省については占領地行政及び海外領土行政を移管させる場合の官制として含みを残した状態である。


「概ねこんなものか?」


 総一郎は結奈に尋ねる。


 彼らは中学高校時代に覚えた現代の省庁と所管事業を基に巨大になり過ぎず、かと言って細分化されない程度に振り分けたが、さすがにこれで完璧だとは思っていない。


「どうしても事業や縄張り争いが出てきそうよね……特に戦時下になると運輸、通信、生産の縄張りを主張してくることになるでしょうから、その辺りを詰めないといけないでしょうけれど」


 結局は専門である官僚たちが最終的な決定権を有しているため、青写真通りにいかないだろうと彼らは溜息を吐くしかなかった。

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