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この身は露と消えても……とある転生者たちの戦争準備《ノスタルジー》  作者: 有坂総一郎
皇紀2586年(1926年)

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タングステン・ショック

皇紀2586年(1926年)7月10日 大英帝国 ロンドン


 北伐を開始してから1ヶ月。蒋介石率いる国民革命政府は着実に占領地を広げつつあった。今や広東省は完全に掌握され、福建省厦門~江西省吉安~湖南省衝陽~広西省南寧を結ぶラインまでを統治下に置くに至っている。


 北伐が順調に進んでいることで内戦の早期終結を期待する観測が列強各国でも報道されることが散見されるようになった6月30日、突然の発表によって国際市場は大きく翻弄されることとなる。


「タングステンの輸出を制限することを宣言し、また、今後の輸出について、国ごとに割り当てと輸出価格を引き上げることとする」


 広州にある国民革命政府の臨時行政府から発せられた蒋の発言は香港を経由し各国へ緊急電で伝えられたのだ。


 ロンドン市場が開場するとともにタングステンの価格は高騰を続け事実上のストップ高となり取引が成立しなくなったのである。同時に石炭、亜鉛、銅、鉄、マンガンなどの価格もじわじわと値上がりを始め、世界的に鉱物資源の影響が出始めたのである。


 国民革命政府の占領地にはタングステン鉱山が広がっていることからこの措置が長期的に継続される場合、タングステン供給は英領マレーなどに限られることから大英帝国も対応に苦慮することとなる。


 即日、列強各国は駐在大使を呼びつけ厳重抗議を行うが、北京北洋政府から派遣されている彼らにしてみれば寝耳に水であり、同時にとばっちりでしかなかった。だが、北京北洋政府を構成する各軍閥も蒋の動きに合わせて自勢力圏にある鉱山の出荷を制限するなどし、漁夫の利を得んとして列強の権益侵害をしだしたのである。


 これらの結果によって支那大陸情勢は明らかに国際市場に悪影響を与え、列強各国は対応に苦慮し、一部は武力制裁を辞さずと公式に声明を出すに至っている。


 しかし、列強各国と違い、歩調を合わせていない国家があった。ドイツ=ワイマール共和国である。蒋はドイツ企業に密約に従って優先的にタングステンの供給をしていたのである。


 無論、ドイツ政府はこれに対して公式見解としては国際市場を混沌に突き落とす真似として抗議していたが、広州湾にはドイツ船籍の貨物船が数多く見受けられ、鉱石を満載した船が南シナ海を南下しているのである。


 この事態を受け、大英帝国は公式にドイツ=ワイマール共和国へ抗議をするとともに、密約の破棄と国際社会と歩調を合わせることを要求したのである。

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