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この身は露と消えても……とある転生者たちの戦争準備《ノスタルジー》  作者: 有坂総一郎
皇紀2586年(1926年)

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第一出光丸の謎の航海

皇紀2586年(1926年)5月13日 北九州 門司


 蒋介石の北伐に大英帝国東洋艦隊が動き出した時から1ヶ月ほど時は遡る。


 この日、門司に本拠を構える出光商会に有坂重工業の幹部社員が訪れていた。用向きは有坂重工業が出光商会から受注したタンカー建造の件である。


 出光商会本社ビルの社長室の窓からは関門海峡が良く見える。その海面は凪いでおり時折日光を反射してキラキラと光っている。大小さまざまな船が海峡を行き交っており、今も大連航路の貨客船が外海へ向かって動き出している。


 ここ門司には大阪商船をはじめ海運会社の社屋が数多くある。そして、内外を繋ぐハブとして機能しているのだ。


「欧米へ出張中の有坂より命があり、出光商会に引き渡す予定であった第一出光丸は引き渡しを遅らせていただきたいとお伝えに参りました」


 幹部社員は平身低頭で引き渡しの遅れについて詫びたが、彼は出光佐三の眼光の鋭さに腰が引けている様であった。


「引き渡しが遅れるというのはわかった。何かあったのであろうから、今渡せと言っても無理だろう。それは良い。有坂君のことだ、完成が遅れているから渡せぬというわけでもないだろう。何があったのか、それくらいは聞いても罰は当たるまい」


 出光はそう言うと眉間のしわを緩めた。


 有坂総一郎が引き渡しを遅らせると言ってきたくらいだ。何か思惑があるのだろうと出光は考え、幹部社員に理由を尋ねてからでもよかろうと判断したのである。


「申し訳ありません。私は引き渡しを遅らせるから詫びて来いと言われただけで、有坂がどういう意図であるかまで聞かされていないのです。ただ、仰る通り、完成が遅れての納期延期というものではありません。予定通りに門司港へ出港する手筈でありましたが、試験航海が終わった直後に給油した後に直ちに出港する様に指示があったと……聞いております。それと……」


 彼はそう言うと持参した書類を出光に手渡した。


「有坂よりこれを出光社長に渡せと指示がありました。中身は私どもも確認しておりません」


 出光は厳秘と書かれた封筒を受け取ると困ったなという表情になった。


 どうやら総一郎は社内の人間ですら知らない何かを行っている様だ。


「全く何を考えておるのやら……船員はうちの社員だというのに……まぁ、少なくとも悪いようにはしていないだろうが……」

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