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この身は露と消えても……とある転生者たちの戦争準備《ノスタルジー》  作者: 有坂総一郎
皇紀2586年(1926年)

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ウェストミンスター

皇紀2586年(1926年)6月1日 大英帝国 ロンドン ウェストミンスター


 蒋介石の北伐開始の報が届くとスタンリー・ボールドウィンは大英帝国首相として緊急閣議の開催を決断、即時閣僚の招集を命じた。


 最も早くダウニング街にある首相官邸に駆け付けたのは大蔵大臣であるウィンストン・チャーチルであった。


「チャイナで戦争が起きた、であるならば、今すぐ動くべきだ!」


 チャーチルは閣議室の扉を開けるやいなや開口一番そう言い放つ。


 26年に入ってから英国の国内情勢は労働者側と政府側が一触即発の状況が続いていた。その大きな理由は二つあった。


 戦前レートによる金本位制復帰はポンドの過大評価が一つ目の理由であり、これによってポンド高による輸出競争力の低下が発生していたのである。


 次に輸出競争力の低下によって石炭産業が打撃を受け、結果、鉱山協会が賃金協定の破棄と賃金切り下げを断行したことによるゼネストの発生である。


 英国政府はゼネスト潰し、スト破りを企み、時間稼ぎを行い、準備が整うやいなや、労働者及び労働組合を挑発しゼネストを意図的に発生させたのである。


 その総指揮を取っていたのが大蔵大臣であり、反共主義者のチャーチルなのである。


 この時のチャーチルの根回しと世論操作は巧妙であり、大衆の支持はゼネスト側に集まらず、ゼネスト潰しを図った政府側に集まったのである。結果、5月中にゼネスト側の全面敗北で労働争議は終結したのだが、英国国内情勢は不穏な空気が漂い続けているのであった。


 そんな沈滞した国内の空気を沸騰させ、軍需産業を中心とする雇用創出と需要拡大の好機と捉えたチャーチルは財政出動を画策していたのである。


「首相、あんたは今すぐに東洋艦隊の香港への移動を命ずるべきだ。そして、インドに駐留する部隊のシンガポールへの前進待機と香港の部隊に臨戦態勢を命じ、いつでも介入出来る様に体制を整えるべきだと思わないか!」


 そう言って自分の席に座ったチャーチルは懐から葉巻を取り出して火を付けると口にくわえる。


「あんたも知っている様に今我が国内の空気は重苦しい。まぁ、煽ったのはこの私だが、今は一刻も早く国民の不満を逸らす先を用意して、アカどもに扇動されるような愚民どもの目を逸らさないといかんと思わないか?」


 言いたいことを言いきるとチャーチルは再び葉巻を加えて満足そうに味わう。具体的なことは何一つ言わないが、阿片戦争以来の好機なのだからさっさと介入して自国影響下の地域を増やせとチャーチルは目で訴えている。


「チャーチル君、私も確かにその意見には賛同したいが、アイツが黙ってはいないぞ?」


 ボールドウィンはそう言うと扉の方に視線を向ける。彼が視線を向けた直後、扉が開く。


「首相、ビヤ樽がまた勝手なことを言って来ていないでしょうな!」


 その言葉を聞くやボールドウィンは肩をすくめて見せる。


「だから言っただろう……」

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