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この身は露と消えても……とある転生者たちの戦争準備《ノスタルジー》  作者: 有坂総一郎
皇紀2586年(1926年)

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結奈の想い

皇紀2586年(1926年)5月5日 ドイツ=ワイマール共和国 ベルリン


 ドイツ訪問中の有坂総一郎のもとに陸軍省の東條英機大佐から電報が届く。


「クルップ本社に出向きボーフォースへの仲介を頼まれたし」


 この内容に総一郎は思い当たる節がなかった。


 帝国陸軍の火砲開発はドイツではなくフランスが手本であり、90式野砲などで代表される大東亜戦争で活躍した火砲の多くはシュナイダーの系譜なのである。


 それゆえにベルリンに滞在する総一郎へ東條が緊急電を送った意図が良くわからかった。ただ、ボーフォースという文言に総一郎は脳内検索でヒットするものがあった。


 ボーフォース40mm機関砲である。


 だが、この時代にはまだ開発は始まっていないものであり、しかも、これを欲しているのは帝国陸軍ではなく、帝国海軍であるはずで総一郎は電報を手にして困惑していた。


「旦那様?」


 シャワーを浴びて浴室から出てきたばかりの結奈が電報を手に呆然としている総一郎に声を掛ける。バスローブを羽織った彼女はタオルで髪を拭きながら総一郎の隣にやってきたが彼は唸るだけで彼女に振り返ることはない。


「旦那様!」


 彼女は頬を膨らませて叫ぶ。


「あぁ、結奈か……どうした?」


「どうしたじゃありませんわ。それは私の台詞ですわね。あなたらしくない。何があったのです?」


 結奈は心配半分、興味半分といった様子で総一郎と電報を見比べる。


 だが、電報を見た彼女は興味なさそうに言う。


「大したことが書いてありませんわね……心配して損しましたわ」


「何を心配したのか知らないが……うーん……これはどう対処すべきかな……なにが目的かよくわからん……」


 総一郎は東條の意図を測りかね、結奈に尋ねる。


「東條さんは、何を考えてボーフォースと関係を結べと言っているのだろうね? 結奈はわかるかい?」


「旦那様……あなたがわからないのに、私がわかると思うのかしら? 殿方がお好きな分野なのでしょう? それを女の私に理解せよと旦那様は仰るのね?」


 結奈は嫌味の様に言う。


 結奈は非常に聡明な女性であるがゆえに総一郎はなんだかんだと彼女を頼り、秘書役として側にいさせる。時折、結奈はそれがたまらなく嫌なのだ。


 彼女にとって、自分は総一郎の妻であって、仕事上のパートナーであるつもりはない。


 しかし、結奈はそれが総一郎にとって必要なことであるのも理解していたし、頼られること、相談されることを心底嫌だとは思わない。


 だが、もう少し総一郎には配慮して欲しいと思うのだ。


「結奈……なんでそんなに機嫌が悪いの? えーとここ一ケ月まともに風呂に浸かってないから風呂好きの結奈にはストレスだったか……そうだとしたら本当にすまない……」


 結奈は総一郎の言葉に思わず天を仰いだ。


「……もういいですわ……ええ、わかっていたわ……はぁ……」

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