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この身は露と消えても……とある転生者たちの戦争準備《ノスタルジー》  作者: 有坂総一郎
皇紀2586年(1926年)

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対支那経済支配戦略構想<5>

皇紀2586年(1926年)1月5日 帝都東京 有坂邸


「有坂、日本円というが、それでは内地経済が破綻しかねんぞ? 破綻せんでも影響を少なからず受ける。そのような危険なことは流石に見過ごせぬし、第一、財政のプロである大蔵省や日銀が認めんだろう」


 東條英機大佐は有坂総一郎の日本円流通による干渉に眉を顰め、再考を促すように言う。


「なにも日銀券でとは言っておりませんよ。扱いは朝鮮や台湾と同じで、現地中央銀行発行の通貨を用います。なに、元々が不安定で赤字経営の朝鮮です。それに先年、朝鮮銀行は日本銀行の融資を得て経営を改善している借りがありますし、指揮監督権も大蔵省にあります。必要であれば、大連に同様の発券銀行を設立して運用するという手もあります」


「だが、それでは効果的ではないのではないのか?」


 東條は尚も疑いの表情で総一郎を見る。


「では、恐らく起こるであろう国民政府の通貨改革を放置しますか?」


「いや、それは……だな……」


 元々財政家ではない東條にはそれ以上の反論は出来ない。史実における失敗は彼も理解はしている。占領地からの資源調達でも通貨問題で上手く行かず、総動員体制になんら寄与しなかったことを彼が一番理解していたからだ。


「なぁ、有坂、この問題は私では手に負えないから、日本産業の鮎川義介や大蔵省の賀屋さん、時期が来たら商工省の岸……そういうわかる相手と話をしてみたらどうだ? いずれにしても大蔵省の案件だろうからな……」


「致し方ありませんね……ですが、いずれ軍には謀略、工作をしていただいて通貨の乱立という状態を継続してもらわねばなりません。それはお願いしますよ」


 総一郎は不満があったが、矛を収めることにした。


 財政関係に関してはいずれにしても東條の影響力の及ぶ範囲ではない。あくまでも、彼を通じて満蒙への工作を行うことが関の山であると総一郎も理解はしていた。


「まぁ、そう脹れるな。なにも協力しないと言っているわけじゃない。実際に工作をやっていたのだから、程度の差はあれど、何かしら援護射撃くらいは出来るだろうからな」


 東條は不承不承といった表情である総一郎を宥める。


「それで、貴様は、何をもって北支を経済支配するつもりなのだ?」


「基本路線は前世同様です。大連・満州を経由した密貿易による税関を逃れた商品の流通で彼らの市場を食い荒らすことで支那の関税収入にダメージを与えることです。これは効果が大きいのは前世で証明されている通りです」


 史実において日本は冀東密貿易を通じて支那の関税収入にダメージを与え、同時に地場産業にもダンピングによるダメージを与えつつ市場を奪っていくという手段を取り、これによって華北経済だけでなく、華北を通して華中にまで商品が流通したことで経済に大きく影響を与えていたのだ。


 当然だが、この冀東密貿易は支那にとっても脅威であると認識され、取り締まりを要請されていた。何より、これによって関税収入を失うだけでなく、現銀が流出していることで貨幣価値が毀損されていることに頭を抱えていたのである。


 ゆえに満州国成立後、蒋介石は通貨改革を断行し、現銀の流出を食い止め、同時に冀東密貿易の無効化を図ったのだ。


「あぁ、それはわかった。それ以外はどうするのだ?」


「北支で生産される綿花を根こそぎ買い占め、それを満州に持ち込み、製品化し、再び北支に流すことで地場産業を完全に破壊するのです。その支払いを現銀ではなく、日本円……鮮銀券や発券銀行を新設してそれに充てるのです」

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