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この身は露と消えても……とある転生者たちの戦争準備《ノスタルジー》  作者: 有坂総一郎
皇紀2586年(1926年)

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対支那経済支配戦略構想<1>

皇紀2586年(1926年)1月5日 帝都東京 有坂邸


「明けましておめでとうございます」


「あぁ、今年もよろしく頼むぞ」


 新年早々、東條英機大佐は有坂邸を訪れている。無論、新年の挨拶が目的ではない。彼の目的は年末から情勢の急転している中国国民党の動きに関しての分析と情報交換が目的である。


 だが、もう一人の当事者である有坂総一郎はそうでもなかった。


「有坂よ、前世以上に蒋介石の動きが活発化しているが、どうもドイツが触手を伸ばしている様なのだ……前世同様にゼークト大将が筆頭である様だ。だが、今は数名の退役・予備役軍人のみが広東に入っている程度と報告が来ている」


「はぁ……そうですか。まぁ、今の段階ではそれほど影響はないでしょう。それに仮にゼークトラインが造られても問題にならんのではありませんか?」


 総一郎はドイツ顧問団の秘密派遣の話を聞いても驚きもせず、それどころか気にするほどでもないと受け流す。


 東條は総一郎のそれに些か拍子抜けしたようで言葉に詰まってしまった。


「東條さん、ドイツ顧問団がどれほど支那に入っていようが、今は無視しましょう。問題は、軍事面ではなく、経済面で蒋介石を支える経済顧問が側近にならないように注意し、妨害する必要があるということ、そちらの方が重要です……ドイツ製の火砲が配備されようが、そこはこちらも同様に正面火力の充実を図れば済む話。ですが、経済だけは絶対に阻止せねばならんのです」


 途中から強い口調になり、拳を振り上げ総一郎は断言する。


 総一郎がここまで蒋介石の経済政策を危険視し、それの阻止を訴えるには理由がある。


 年末に総一郎は妻の結奈とある会話をしていたところ、ある事実に気付いてしまったからだ。それゆえ、満州事変の前倒しすら検討していたのである。


「経済というが、前世、蒋介石(アレ)の経済政策は大したことをしていないと思うが……我が軍の攻勢に対して焦土戦術や工場の疎開をしていた程度で統一的な経済政策などなかったと思うぞ」


「それは一面的な見方でしかありません……ですが、それ以前に満州事変と支那事変では明らかに違う状態であるのにも関わらず我が帝国は満州事変の成功を支那事変でも達成出来ると考えていた……結果、大東亜戦争に至るも経済支配が出来ず、占領地経済を帝国経済に組み込んで総力戦の足しにすることが出来なかったのです……そう、我が帝国は戦争経済による恩恵を狙っていながらそれを得ることが出来なかったのです……それが満州事変と支那事変の大きな違いなのです」


 東條は総一郎の言葉についていけなかった。


 それは東條の理解力ではなく、総一郎があまりにも端折り過ぎたためである。


「有坂よ、貴様の言葉は詰め込み過ぎだ。抽象論になり過ぎて肝心な部分がかえって見えなくなっている。落ち着いて順に話せ。夜はまだ始まったばかりだ……とことん付き合うから、思うところを言ってみろ……なに、これでも総理大臣を務めた身だ。なんなら、あいつを連れてきても良いだろう。アレなら貴様の言うところも理解出来て対抗策を思いつくやもしれん」


「あいつ? 誰ですか?」


 総一郎は東條の言うところの「あいつ」が誰なのか想像がつくようでつかなかった……。何人か該当しそうな人物が居たからだ。


「決まっているだろう? 岸信介だ!」

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